「命に関わる問題」政治の責任で…前川收氏に聞く

西日本新聞 熊本版 綾部 庸介 古川 努

 蒲島郁夫知事が川辺川ダム計画の白紙撤回を表明した2008年当時、自民党県連幹事長だった熊本県議の前川收会長(60)は西日本新聞のインタビューに応じ、当時の知事判断を「やむを得ない」とする一方、「命に関わる問題を民意に委ねてよいのか」と述べ、政治の責任で治水策を進めるよう求めた。 (聞き手=綾部庸介、古川努)

 -蒲島氏が白紙撤回を県議会で表明した当時を改めて振り返って

 「治水効果があることは分かっていた。しかし、ダム建設予定地の相良村と、最大の受益地とされる人吉市、両方の首長が反対した。この地域から『ダムは駄目』と言われたら、建設を進められないのはやむを得ない判断だったと思う」

 -当時、白紙撤回の事前通告はあったのか

 「それは言わないことになっている」

 -ダム推進の自民党としては、知事選で支援した蒲島氏の表明は予想に反したのでは

 「他の候補者が反対する中、蒲島氏だけ『難しい問題であり判断を留保する』という主張だった。最終的にはダム建設を理解してくれると思っていたが、結果として民意をとった」

 「ただ、誰の責任かという話ではない。09年の民主党政権では、市町村長が反対していない八ツ場ダムも中止になった。『無駄な公共事業』という当時の風潮からすれば、蒲島氏の表明がなくても川辺川ダムは中止になっていたのでは」

 -八ツ場ダムは建設が再開され、完成した

 「八ツ場ダムは昨年の台風19号で効果を発揮したが、球磨川では『Xデー』が来てしまった。私としては、ダム建設を進められなかったことに責任を感じている。当時関わっていた人はみんな感じていると思う」

 -今年9月の県議会全員協議会で、蒲島氏に「政治の責任は問わない」と発言した。ダムを巡る政治責任と民意の関係は

 「人命が関わる問題を民意で決めていいのか。政治家が責任を持って判断すべきではないか。全てを民意に委ねることはできない。民意は責任を取れない」

 「災害から生命財産を守るという責任は政治にしか果たせない。もしダムがあることで、球磨川の水位が1メートルでも下げられていたら、1人、2人でも命を救うことができたのならば造るべきだ。それを今回の甚大な被害で再確認した」

 -潮谷義子前知事時代の住民討論会について

 「対立を深める結果になった。ダムは悪だという考えと、賛成派を話し合わせても正解は導けない。不毛だったし、川辺川ダムを社会問題化してしまった」

 -蒲島氏の白紙撤回表明をどう評価するか

 「ダムの賛否を巡る地域の分断、という社会問題を解決した点は評価に値する。判断したということ自体が功績だ」

熊本県の天気予報

PR

熊本 アクセスランキング

PR

注目のテーマ