「ボトムアップ型」で米朝交渉再開遠のくか?文政権、南北融和に影も

【再生 バイデンの米国】(5)

 「北朝鮮の体制に正当性を与え、制裁を弱めた」。米大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン前副大統領は10月の候補者討論会で、トランプ大統領が金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と3回も会談しながら、非核化を果たせなかった外交手腕を痛烈に批判した。

 伝統的に民主党政権の政策決定は「実務者協議の積み上げに基づくボトムアップ型」(日韓外交筋)。トップ外交を好んだトランプ氏と違い、バイデン氏は日韓などと連携しながら、原則重視の外交を展開するとの見方が支配的だ。

 バイデン氏は正恩氏との直接会談について「条件なく会いはしない」と突き放す。開催条件に「核能力縮小の確約」を挙げており、段階的な非核化と引き換えに経済制裁解除を求めている北朝鮮と主張の隔たりは大きい。

 首脳間の信頼関係構築も一筋縄ではいかない。バイデン氏が昨秋の遊説で正恩氏を「暴君」と非難したのに対し、北朝鮮の朝鮮中央通信はバイデン氏を「狂犬」「痴呆末期」と応酬。正恩氏は関係が良好だったトランプ氏の再選を望んでいたとされ、新政権下では非核化交渉の早期再開は望めそうにない。

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 北朝鮮は2019年10月、一方的に非核化交渉の決裂を宣言した。以降、米本土が射程に入る大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射こそ自重しているものの、3月に短距離弾道ミサイルなどを4回発射。6月には開城(ケソン)の南北共同連絡事務所を爆破した。米韓との過度な関係悪化は避けつつ、核戦力の完成を目指す構えだ。

 韓国の情報機関・国家情報院は、北朝鮮がバイデン氏の姿勢をうかがいながら21年1月の党大会で新たな対外方針を示すと予測。米新政権の出方を探るため、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)やICBMの発射など挑発に踏み切るとの臆測もある。

 バイデン氏が副大統領を務めたオバマ政権は、制裁で北朝鮮に圧力をかけつつ方針転換を待つ「戦略的忍耐」を掲げたが、逆に北朝鮮の核・ミサイル開発の進展を招き、失敗だったと批判される。「トランプ氏ほど北朝鮮問題に入れ込むとは思えない」。日韓外交筋にそんな見方もあるが、北朝鮮の核戦力は完成に近づいており、看過できない状況が待ち構える。

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 「(米新政権が)北朝鮮制裁の目標を国家の弱体化と設定し、『悪意的な傍観』を進める可能性がある」。韓国の政府系シンクタンクは、文在寅(ムンジェイン)政権の懸念をこう代弁する。

 革新系の文政権は、米朝交渉と切り離した形で、開城工業団地の操業再開など南北協力の強化をもくろむ。保守系メディアは、文氏の前のめりの姿勢が制裁維持を原則とする米新政権との足並みを乱しかねないと批判を強めている。

 バイデン政権の対北朝鮮の基本方針が定まるのは21年半ばとみられ、外交上の空白が生じるのは避けられない。文氏の任期が22年5月に迫る中、今後は政権のレームダック(死に体)化の懸念も抱える。

 南北関係進展を自身の政治的遺産(レガシー)としたい文氏は早期の交渉再開に向けて仲介役を目指すが、ソウルの米韓情報筋は「米朝とも、もはや韓国に仲介役を期待していない」と冷ややかだ。 (ソウル池田郷、ワシントン田中伸幸)

 =おわり

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