映えるツール・ド・九州 岩田直仁

西日本新聞 オピニオン面 岩田 直仁

 自転車のプロ・ロードレースは日本ではまだマイナーだが、欧州ではサッカーに次ぐ人気スポーツの一つ。ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリアに続き、ブエルタ・ア・エスパーニャ(スペイン)が8日に閉幕、コロナ禍で開催が危ぶまれた世界三大レースがすべて終了した。

 風の抵抗を減らすため、肩が触れ合うような集団で走る。スピードが落ちる峠の沿道には、選手を間近に見たい観客が密集する。屋外を移動しながら、実は「密」だらけ。

 主催者は開催時期を変更し、宿泊や移動中の選手を隔離、観客の密集を防ぐといった対策を講じた。残念ながら、一部で選手の感染が確認され教訓を残したが、日々、感染症におびえ続ける私たちには、やはりスポーツが与えてくれる喜びと活力が必要なことも教えてくれた。

 さて、欧州で熱戦が続く中、九州の自転車レースファンに朗報が舞い込んできた。

 九州・沖縄・山口各県と経済団体でつくる九州地域戦略会議が、自転車レース「ツール・ド・九州・山口(仮称)」を2023年にも始める方針を決めた。国際自転車競技連合(UCI)認定の国際レースを目指すという。

 1903年に始まった「ツール・ド・フランス」を直訳すれば「フランス一周」。当初は、忠実にフランス国境をなぞるように一周していた。コースは中世からさまざまな職人が移動しながら腕を磨いた巡歴の道と重なっていたという。誰にも分かるように「国の形」を示し、近代国家における国民意識の形成を後押ししたという説もある。

 思えば、2013年に約60年の歴史に終止符を打った西日本新聞社主催の九州一周駅伝のはるか遠い源にも、古代の官道を使った交通・通信のための「駅伝馬」という仕組みがあった。

 東京一極集中が進む中、一周駅伝には、各県が団結して中央に対抗するため、「九州は一つ」という意識を醸成したいという願いも込められていただろう。

 九州では大分・国東、熊本・天草、阿蘇などで大きなサイクリング大会が開催され、ファンの裾野は広い。私も幾多の大会に参加してきた。九州ほど自転車で走って楽しく、走る姿が「映(ば)える」エリアはないと断言したい。

 「ツール・ド・九州-」では、山岳部も含め「九州一周プラスアルファ」のコース設定を期待したい。久住の草原や噴煙を上げる桜島を背景に、世界のトップ選手が疾走する。想像するだけで、コロナ禍で塞(ふさ)ぐ気分も少しは晴れる。待ち遠しい!! (論説委員)

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