バロック音楽の響きを福岡で バイオリニスト 古澤巖さん

西日本新聞 根井 輝雄

 世界的に活躍するバイオリニストの古澤巖さん(61)。これまでも海外での演奏活動や、日本の雅楽との共演などを手掛けてきましたが、現在は1600~1700年代のバロック音楽に取り組んでいます。12月17日には福岡市でバロックのコンサートも開きます。新境地を開拓している古澤さんは、九州との深い縁もありました。その思いをリモートで尋ねました。

 -今回はバロックのコンサートです。

 ★古澤 例年だとベルリン・フィルのメンバーが来日していたんですが、今年は新型コロナウイルスの影響で予定通りいかない。自分がちょうど古いバロック音楽を学んでいる最中で、バロックを突き詰めたいという思いがあり、本格的なバロックのアンサンブルで演奏会をしたいと思いました。自分の師匠になった武澤秀平さんが音楽監督を務めています。

 -武澤さんとの出会いは。

 ★古澤 昨年の今頃、栃木県足利市の「ココ・ファーム・ワイナリー」の収穫祭で、武澤さんが一人でビオラ・ダ・ガンバを弾く姿を見たんです。まだ若い方ですが、こんなに音を操る人を見たことがない。自分の知らない技を学びたい、と弟子入りしました。

 -バロックの魅力は。

 ★古澤 古い時代の音楽については、世界的に研究が日々進んでいて、考古学のように新しい発見がある。弓で弦をこすって音を出すという意味でのルーツですね。僕の場合、プロの音楽家として、常に何かしら得るものを探し、よりよい演奏をしたいという気持ちがあります。

 また、日本の雅楽は当時と同じ演奏ですが、西洋音楽は時代ごとに変わります。音そのものの史料はないので、想像の世界ですが。これまで雅楽の東儀秀樹さんに触発され、古い音楽を演奏するとき雅楽が参考になるとずっと思っていて、武澤さんとの出会いでそれを実現できました。

 -どんなコンサートになりますか。

 ★古澤 武澤さんに他のメンバーを集めてもらいました。今回、コントラバスやチェンバロを使わない“実験”。代わりに、指でつま弾くリュートを使います。バロックの時代に活躍していましたが、現代はなじみがなくなった楽器です。

 -バイオリンの名器「ストラディバリウス」を使いますね。

 ★古澤 300~400年前に製作された楽器が今も最高ランクで、その後に出てきた人はなかなか超えられないですね。大事なコンサートではストラディバリウスを借りて自分が演奏することになっています。バロック時代の姿に戻った演奏なので、ストラディバリウスも喜ぶと思います。弓も、ベネズエラ出身のポール・エレラさんが製作した古い形の弓を使います。ポールさんはコンサートにも参加します。

 -コロナの自粛期間はどうでしたか。

 ★古澤 半年くらい休みました。仕事に追われる毎日だったので、外国のバカンスのようにリフレッシュできました。普段は思い切りできないような練習に没頭できた。半年前とは弾き方が違うと思うんです。武澤さんの元に通ったのも、時間に余裕がないとできないですね。

 -コロナ後のコンサートは。

 ★古澤 「密」を避けるため、先が見えるまでは客席は1席おきなのですが…。何と、人が半分だとホールの音がすごく響くんですよ。満席だと服が音を吸う。リハーサルの時はいい音がするのに、常々「もったいない」と思っていたんですが、席を空けると、お客さんにも響きがはっきり分かり、生の音を体感できます。

 -ところで、両親が九州出身だそうですね。

 ★古澤 父が嬉野(佐賀県)、母が佐世保(長崎県)の出身です。演奏会では九州に来ていたんですが、父が10年前に84歳で亡くなってからは毎年、お墓参りするようになりました。現在92歳の母は、波佐見(長崎県)にいる同級生に毎年会っています。

 -九州の印象はどうですか。

 ★古澤 今年5月に出したアルバム「Violon d’amour」で、高千穂(宮崎県)をイメージした「高千穂幻想」という曲を作りました。古事記に描かれた歴史が、九州にはありますね。日本のルーツの一つとして、九州は明るく活気がある印象です。コンサートでも、演奏家は皆、九州に行きたがる。僕はサーフィンで日向(宮崎県)によく行きますが、日向はおおらかで、すごくシンパシーを感じますね。 (文・根井輝雄)

 ▼ふるさわ・いわお 1959年生まれ、東京都出身。3歳半でバイオリンを始めた。79年、日本音楽コンクール第1位。桐朋学園大首席卒業。海外でさまざまな演奏家に学び、90年代は海外のメンバーと共演。雅楽の東儀秀樹とも共演を続けた。洗足学園音楽大客員教授も務める。

 福岡でのコンサートは12月17日の午後2時と同7時の2回、福岡市・天神のアクロス福岡で。S席6500円など。問い合わせはヨランダオフィス・チケットセンター=(0570)033337。

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