原発遠い安定稼働、エネルギー政策 曲がり角

西日本新聞 総合面 山下 真

 再稼働後に運転停止に追い込まれる原発が相次いでいる。東京電力福島第1原発事故後の新規制基準下での再稼働は5原発9基。このうちテロ対策施設の整備遅れや司法判断による運転差し止めもあり、国内で現在、稼働中なのは九州電力玄海原発4号機(佐賀県)だけだ。菅義偉首相は2050年までの温室効果ガス排出「実質ゼロ」を掲げ、原発を引き続き活用する方針だが、安定稼働は見通せない。原発頼みのエネルギー政策は岐路に立たされている。

 「原子力も重要な脱炭素技術として活用を進める」。今月2日の衆院予算委員会。脱炭素社会に向けたエネルギー政策を問われた梶山弘志経済産業相は、こう強調した。

 政府はエネルギー基本計画で30年度の電源構成に占める原発の比率の目標を「20~22%」と定める。達成には「30基程度の再稼働が必要」(経産省資源エネルギー庁)とされるが、現状とは大きな隔たりがある。

 再稼働は9基にとどまり、このうち九電川内原発1、2号機(鹿児島県)や関西電力高浜3、4号機(福井県)は新たに義務付けられたテロ対策施設の設置が遅れ、四国電力伊方3号機(愛媛県)は運転停止を命じる司法判断を受けた。関電大飯3号機(福井県)も配管に傷が見つかり、稼働停止が続く。

 定期検査に入った原発もあり、全国で初めてテロ対策施設が完成した川内1号機が17日に再稼働するまでは、運転は玄海4号機だけの状態だ。

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 「安全基準が厳しくなり、再稼働にはコストも時間もかかる。原発推進派も再稼働は容易ではないと考え始めている」

 都留文科大の高橋洋教授(エネルギー政策)はこう分析する。18年度の電源構成に占める原発の比率は6%。今後、再稼働が進んだとしても30年度に10%を上回るのは難しいとみる。

 その先はさらに厳しそうだ。福島第1原発事故が起きた11年に全国で54基あった原発は、運転期間が原則40年に制限され21基が廃炉となった。今後、稼働40年を迎える原発がそれぞれ運転延長されず廃炉となれば、49年には原発ゼロに近づく。そこで原発の新増設が焦点となるが、国民の原発への不信感は根強く、菅首相は「現時点では想定していない」と明言を避ける。

 脱炭素社会を見据えたエネルギー基本計画の見直し議論も経産省で始まった。高橋氏は、天候変動に左右されやすい再生可能エネルギーでも、送電環境の整備などを進めれば安定供給できると主張。「世界は再エネ主力電源化に大きく動いている。日本もその方向性を明確に打ち出すべきだ」と指摘する。 (山下真)

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