企業の努力に「あっぱれ」 山内進氏

西日本新聞 オピニオン面

◆酒税改正

 仕事を終え、最初の一杯目に飲むビールは本当においしいと思う。このビール一杯に酒税がいくらかかっているなど気にしてはいないだろう。

 10月1日から酒税が改正され、前日には第三のビールを駆け込みで箱買いしている人がたくさんいた。第三のビールの値上げは、消費者の懐への影響が大きいようだ。

 2020年の改正がスタートで23年、26年と3段階改革でビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)の税率が一体化される予定である。ビール類間における商品の税率の違いから生じる消費行動への影響がなくなり、課税の中立性上は望ましいといえよう。

 1996年に、世界貿易機関(WTO)から焼酎の税を引き上げるように勧告されたことがあった。当時、私はテレビ番組で酒税の改正について解説を頼まれていた。そのため資料を当時の大蔵省に請求したところ、WTOのメンバーが近々来ると聞いた。「WTOのメンバーに焼酎を飲んでもらったらどうでしょうか?」という提案をしてみた。焼酎の味をわかってもらい、焼酎への課税を食い止めようというのは慶応大の藤森三男教授の案だった。

 残念ながら焼酎の税金の引き上げは決定した。この引き上げに対して鹿児島、宮崎、熊本等の焼酎業界は新たな商品を開発し、口当たりのいい最高級の焼酎を生み出した。その企業努力はあっぱれだ。

 また度重なる酒税改正があったが、ビールの税金は他の酒類よりも高い。もともとビールは贅沢(ぜいたく)品であったとか、税収確保等が理由であろう。この高い税格差に対してビールメーカーは知恵を絞り、価格の安い発泡酒、第三のビールを生み出した。これもあっぱれだ。

 今回の酒税改正を機会に、ビールの税は下がったが、それでも10月には、麦のおいしさを生かした糖質ゼロの健康志向のビールなどが出てきた。酒税の負担、格差を考慮しながらの製造は、本来の生産を歪(ゆが)め課税の中立性を害するという考え方もあろう。それでも酒税改正の度に繰り広げられた企業努力にあっぱれと言いたい。

 酒類への嗜好(しこう)が多様化している現在、異なる酒類間での税の差も、やがて縮小するであろう。それでも、税にかかわらず質の高い酒類を生み出す、あっぱれな企業努力は続いていくに違いない。

 山内 進(やまうち・すすむ)福岡大商学部教授 慶応大で博士号を取得し福岡大へ。客員研究員としてオックスフォード大に留学経験がある。税理士・会計士補。福岡県生活衛生営業審議会会長などを務める。

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