この季節に…

西日本新聞 オピニオン面

 この季節に里山を歩くと、ところどころにカラスウリの楕円(だえん)形の実がぶら下がっているのに気付く。冬が近づくにつれ色あせていく野山の景色の中で、鮮やかな赤い色が散歩者の目を楽しませてくれる

▼宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」に「烏瓜(からすうり)のあかり」という不思議な言葉が出てくる。主人公ジョバンニの暮らす町では「ケンタウル祭」という星祭りの夜に、子どもたちが「烏瓜のあかり」をこしらえて川に流す風習があるというのだ

▼賢治の故郷にそういう習俗があるわけではなく「烏瓜のあかり」は完全な創作であるらしい。童話には形状の描写がほとんどない。それだけに一層想像力をかき立てられる

▼そこで実際に作ってみた人がいる。東京都東村山市の日本画家、尾山篤二郎さんだ。ハロウィーンのかぼちゃランプの要領で、庭になっていたカラスウリの身をくりぬき、短く切ったろうそくを立てた

▼「カラスウリの実が柔らかいので形を崩さないようくりぬくのが難しかった」と尾山さん。ネットで写真を見ることができる。オレンジ色の光が幻想的だ。はかなさ、か細さも感じさせる美しさである

▼面白いのは、賢治が「青いあかり」と書いていることだ。「熟す前の実を使えば、青いあかりになるのでは」と尾山さんは推測する。賢治の頭の中ではどんなイメージを結んでいたのか。あれこれ想像させてくれるのも賢治の童話の楽しさである。

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