中国、アジア経済主導急ぐ 影響力拡大を日本は警戒

西日本新聞 総合面 坂本 信博 古川 幸太郎 久永 健志

 日本や中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国の首脳が15日、協定に署名した「地域的な包括的経済連携(RCEP)」。年内合意に特に積極的だったのは中国だ。「新冷戦」と呼ばれるほど米国との対立が深まる中、インド太平洋地域の国々との関係を強めてアジア経済の主導権を握りたい習近平指導部の思惑が透ける。中国をけん制するためにも、日本は巨大市場を持つインドの参加を望んだが果たせず、中韓との実利を優先する格好となった。

 「多国間主義と自由貿易の勝利だ」。この日、中国の李克強首相は声明を発表し「われわれが自信を持って協力すれば、東アジアそして人類のより良い未来を創造できる」と強調した。

 アナリストは「米国との覇権争いで少しでも優位に立ちたい中国にとって、米国抜きの巨大経済圏の構築が急務だった」と見る。

 中国は、トランプ米大統領が連発する対中制裁に苦しんできた。RCEPが実現すれば、2019年時点で最大の貿易相手国である米国市場への依存度を下げ、追加関税などの打撃も減らすことができる。年明けのバイデン政権誕生後、米国が環太平洋連携協定(TPP)に復帰する可能性もあるとにらみ、中国は年内合意を急いだ格好だ。

 RCEPを巡っては、12年の交渉立ち上げから参加してきたインドが昨年11月、対中貿易赤字拡大の懸念などから撤退を表明。日本をはじめ参加国の間では、13億人超の人口を抱えて成長が見込まれるインドの交渉復帰を求める声が根強かったが、今年6月に中国とインドの係争地域で軍事衝突が勃発して事態は悪化した。外交筋は「中国にとって、インド不在の方が存在感を発揮でき主導権も握りやすくなる」と分析する。

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 巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げて影響力を強める中国。ASEAN各国の反応はさまざまだ。

 タイ政府関係者は「タイへの最大の投資国は日本から中国に替わった。中国がリーダーシップをとってもいい」と話すが、中国の勢力拡大に利用されるのを警戒する声もある。シンガポール政府関係者は「中国との関係が他国より突出しないよう注意したい」。インドネシア政府関係者も「日本にバランサーとしての役割を期待する」と述べた。

 日本にとってインドの不参加は痛手だ。インドは、日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」構想の中で、中国との対立軸の一翼を担うだけに「地政学的観点から必要」と日本政府関係者。中国の影響力が突出することを警戒し、インドの早期参加が可能な「異例」(外務省幹部)の措置を設けた。政府高官は「早期参加へ日本が主導的役割を果たす」と力を込めるが、先行きは不透明だ。

 通商政策に詳しい日本総合研究所の熊谷章太郎副主任研究員は「各国と別に協定などを結んでいる国にとっては、既存の協定を上回る自由化が実現するかは不透明だ。中国の台頭が脅威か好機かは産業・品目別で異なる。競合ではなく補完関係を築くことが求められる」と指摘する。

(北京・坂本信博、古川幸太郎)

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