はぐらかし、批判回避…菅首相の答弁「鉄壁」のゼロ回答

西日本新聞 総合面 前田 倫之

 臨時国会で答弁能力を不安視された菅義偉首相だが、一問一答形式の衆参予算委員会での初論戦をひとまず乗り切った。焦点の日本学術会議問題では譲歩せず、会員任命拒否の理由を一切明かさない答弁ぶり。有識者に読み解いてもらうと、「鉄壁」「はぐらかしてばかり」と評価が分かれた。

 「人事に関することなので、お答えは差し控える」。今月2~6日に開かれた予算委。任命拒否に関する質問が核心に迫ると首相はこう繰り返してかわし、立憲民主党の枝野幸男代表から「壊れたレコードのようだ」とやゆされた。

 麗沢大の川上和久教授(政治心理学)は「たたかれても理由は絶対言わない、との覚悟を感じた。野党の時間切れを狙った戦術だろう。失言もなく『鉄壁のガースー(首相の愛称)』は健在だ」と分析。「全集中の呼吸で答弁させていただく」と人気漫画「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」のせりふを引用した点も「話題をつくることで批判の矛先をそらしてみせる」テクニックだったとみる。

 「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を求めたい」「閉鎖的、既得権益のようになっている」と、学術会議に関する首相の主張は二転三転。「多様性が大事」としながら、任命拒否した6人のうちには若手や女性の研究者も含まれ、野党側は「支離滅裂」と批判。審議はたびたび紛糾した。

 街頭で国会質疑を上映する「国会パブリックビューイング」に取り組む上西充子法政大教授は「質問に正面から答えておらず、臨機応変な判断が見られなかった」。加えて首相が、内閣府と学術会議の間の事前調整がなかったことを拒否の背景の一つとして持ち出したことを「調整に応じなければ任命拒否する、忖度(そんたく)しろということか」と疑問視した。

 では、話す様子はどう映ったか。企業人らを対象にプレゼンテーションの方法を教えている「ベストスピーカー教育研究所」(大阪府)の高津和彦所長は、首相の答弁の声量が「官房長官時代に比べ大きくなった」と評した。特に何かを伝えたい場面で目を見開けば、より真剣さが伝わるとアドバイスした上で「『えー』『まぁ』といった感嘆詞が多く、人ごとに聞こえるところは要注意。余裕を演出したのかもしれませんが」とも。

 答弁書の棒読みや秘書官による紙の差し入れが目立ち、ちぐはぐな印象も与えたが、政府高官は「(首相は)初々しかった。場数を踏めばもっと良くなる」と今後に期待した。

(前田倫之)

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