九州のIR構想 立ち止まり再考すべきだ

西日本新聞 オピニオン面

 これだけの逆風の中を突き進むのは、やはり無謀に見えてしまう。ここはいったん立ち止まり、再考すべきではないか。

 政府の方針で構想が各地で進む、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業のことだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大は「第3波」に入ったとの指摘もある国内だけでなく、欧州でも再拡大するなど、全く先の見えない状況にある。

 にもかかわらず、IRについて菅義偉首相は国会で「観光先進国となるために重要。必要な手続きを進める」と述べ、積極的な姿勢を崩していない。

 九州各県と経済団体などでつくる九州地域戦略会議も、リゾート施設ハウステンボス(長崎県佐世保市)への誘致機運を醸成しようと、来年には推進協議会を発足させる方針だ。

 IRは大型会議場やホテル、商業施設に劇場などの娯楽施設を併せ持つ。これにカジノを加えて集客力を増し、成長戦略の目玉の一つとしている。

 都道府県または政令市が公募で選んだ事業者と共同で整備計画を国に提出するルールだ。現時点で長崎県に加え横浜市、大阪府・市、和歌山県の計4エリアが誘致を表明している。

 地域経済の起爆剤にと期待するのは理解できる。カジノの収益は施設全体の7~8割を占めるといい、自治体はその15%を得られる。長崎県は経済波及効果を年2900億~3800億円、雇用創出効果を2万4千~3万1千人と見込んでいる。

 ただ、世界のカジノ業界の経営はコロナ禍で激変している。海外の事業者は営業休止や「3密」回避などの対策を余儀なくされ、業績は軒並み悪化した。横浜市との事前協議に加わっていた7社のうち、業界最大手の米国企業は辞退したという。

 こうした事情を受け、観光庁は自治体による申請期間を当初の来年1~7月から9カ月延期すると発表した。だがIR推進の姿勢は変わっていない。

 感染対策が欠かせないウィズコロナの時代、IRは九州観光のけん引役となるだろうか。頼みのインバウンド(外国人訪日客)は現在ほぼゼロで、回復はコロナ禍次第である。そこに依存している構造的な弱点が浮き彫りになったばかりだ。

 思い出すのはバブル崩壊後、各地で大型レジャー施設が破綻した総合保養地域整備法(リゾート法)の失敗である。巨額債務が地域に与えた傷は深い。二の舞いを演じてはならず、観光戦略がギャンブルでは困る。

 カジノがなくても日本独自の文化や自然を楽しみに訪日する人々はいる。先行きが不透明な今だからこそ、腰を据えて観光の在り方を探りたい。

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