分断の歴史繰り返すな ダム建設に反対した前相良村長 徳田正臣氏

西日本新聞 熊本版 中村 太郎

 2008年8月、熊本県の蒲島郁夫知事に先立って川辺川ダム建設への反対を表明した前相良村長の徳田正臣氏(61)が西日本新聞のインタビューに応じ、ダムの治水効果を認めた上で「賛成、反対で地域が分断されるマイナス面のほうが大きい」と指摘。河床掘削や堤防かさ上げなどダム以外の対策を進めるよう訴えた。

 -08年3月の初当選時は「ダムへの賛否は中立」との立場だった

 「計画当初の多目的ダムから発電や利水が外れ、もともと費用対効果には疑問を持っていた。だが村長として、いったんゼロから再考して結論を出そうと考えた。過去の災害や気候変動の状況などを踏まえて、100年後の人吉球磨地域にとってダムは無いほうが良いという結論になった」

 -豪雨後に国土交通省が出した「川辺川ダムがあれば人吉市の浸水域を6割減らせた」との検証をどうみるか

 「ダムを造る当事者である国交省の検証では、客観性があるとはいえない。地域を納得させる立証責任が国にはあるのに、これでは不十分だ」

 「ダムに一定の治水効果があることは認めるが、川辺川ダムだけで命を守れるとは思わない。今回の豪雨では、川辺川以外の支流域でも相当な雨が降った。ダムで洪水を食い止めるというのだったら、川辺川以外の支流にもダムを造らないといけない」

 -ダム計画中止後、国や県、流域首長でダムによらない治水対策を協議してきたが、対策は進まなかった

 「国が出してきた非ダム治水案は工期が50年前後かかり、事業費が1兆円を超えるようなものもあった。『国は無理な案を出して、ダム建設に誘導したいのかな』と当初から疑念を持っていた」

 「国や県には12年間、川辺川の堤防かさ上げや河床掘削を再三要請してきた。掘削はある程度進んだが、堤防は手つかずだった」

 -ダム以外に、できる治水対策とは

 「住民の防災意識を高めるようなソフト対策を進めてほしい。自治体の避難勧告、避難指示のタイミングも検証すべきだ。今回も前日から大雨が予想されており、もっと早く避難勧告や指示を出せたはずだ」

 「山地の多い人吉球磨地域では、治山も重要。林地に残された材木が豪雨で流れて橋に引っかかり、越水して水に漬かった集落もある。木造住宅の推進など国産材を活用する施策を進めてほしい」

 -川辺川ダム計画ができてから、建設予定地の相良村でも約60世帯が村内外に移転するなど翻弄(ほんろう)されてきた

 「流域はダム賛成、反対で分断されてきた。再びダム建設に振り子が振れれば、また分断の歴史が繰り返されると懸念している」

 (聞き手=中村太郎)

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