「五輪実現」高らかメッセージ…コロナ対策は示せず 首相・バッハ会談

西日本新聞 総合面 下村 ゆかり 前田 倫之

 「われわれは、日本の皆さんの側に立ちます」-。16日、菅義偉首相らと相次いで会談した国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、来夏の東京五輪・パラリンピックを必ず実現するとのメッセージを高らかに発した。日本政府側としては狙い通りの展開となったものの、国内外で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症に端を発する諸課題への対応はいずれも途上。開催への道程はいまだ描けていない。

 午前、官邸に現れたバッハ氏を、首相は笑顔とグータッチで出迎えた。

 「私、学生時代に空手で心身を鍛錬しました。スポーツの持つ力が、いかに偉大かを体感したものです」。自身の競技歴を交え親しみを演出しながら、五輪とIOCに対する理解を伝えた首相。バッハ氏も、これに「今、人類はトンネルの中に入っているかもしれませんが、五輪の聖火がトンネルの先に見える明かりになるであろうことを、共に信じたいと思います」との言葉で応じた。

 バッハ氏は午後には、3月に電話会談で史上初の1年延期を決めた相手である安倍晋三前首相を訪問。東京大会の旗振り役の功績をたたえるとして、「オリンピックオーダー(五輪功労章)」を自ら、安倍氏の首に掛けた。「日本国民に対し『頑張れ』『絶対に成功させろ』と励まし、エールを送るつもりで下さったのではないか」と安倍氏。

 さらに夕刻、並んで記者会見した大会組織委員会の森喜朗会長も「しっかりとお互いの価値観を共有しながら、絆を深めていきたい」とバッハ氏に語り掛け、密にコミュニケーションを取った。大会の開催可否の決定権を独占するIOCのトップとの「共同歩調」を、念入りに国内外に印象付けたかったとみられる。

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 バッハ氏と首相は9月に電話会談し、この時期の来日に合意していた。その後、新型コロナは欧米で急に拡大し、外出と店舗の営業制限などロックダウン(都市封鎖)に乗り出す国も出現。日本国内も11月以降、「第3波」とみられる流行期に入り、バッハ氏から「お墨付き」を得て大会開催を決定づけたかった日本政府としては勢いをそがれる形となった。

 産業能率大スポーツマネジメント研究所が10月下旬に発表した調査結果では、東京五輪・パラリンピックに関して84・8%が「来年の開催も難しいと思う」と回答。国民の開催機運が高まっているとは言えない。同様に、大会スポンサーも12月末の契約終了期限が近づく中、多くの企業が延長にはなお慎重姿勢だ。

 日本政府側は、開催の前提条件となる新型コロナ対策を年内に取りまとめて安心感を打ち出し、来年3月のIOC総会、3月25日の聖火リレーの福島県スタートと前進したいところ。だが、追加費用負担、観客数の問題、各国の代表選考会が開けるのかなど課題は山積している。新型コロナの状況が厳しさを増した場合、選手たちから中止などの決断を求める声が上がる可能性もある。 (下村ゆかり、前田倫之)

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