国の経済対策 規模より中身を吟味せよ

西日本新聞 オピニオン面

 見せ掛けの「成長」に意味はない。実態を直視して、今後の対策を考えるべきだろう。

 7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が発表された。実質成長率は前期比5・0%増で昭和40年代の高度成長期以来の高い伸びとなった。

 今回は新型コロナウイルス感染拡大で同8・2%減と戦後最悪だった4~6月期と比べたもので、その大幅な落ち込みを埋めるにも至っていない。

 日本の景気は一時に比べれば確かに持ち直している。自動車など業績が急回復している企業もある。ただ、個人消費や設備投資は冷え込みが続き、経済全体としては新型コロナの痛手から脱却できてはいない。

 GDPが元の規模に戻るには2、3年かかるとみられる。これからの感染拡大によっては、影響がさらに長期化する恐れもある。政府には感染や国民生活の状況を見極めた上で、迅速、的確な対応が求められる。

 その意味で、菅義偉首相が追加経済対策の策定と本年度の第3次補正予算編成を指示したことは評価できる。政府は、補正と来年度当初予算を一体化させた「15カ月予算」を編成する方針だ。政府与党内で中身の議論が本格化することになる。

 気掛かりなのは、早くも与党から15兆円、30兆円といった補正予算の規模を競うような発言が相次いでいることだ。

 本年度で3カ年緊急対策の期限が切れる「国土強靱化(きょうじんか)」も、新たな経済対策の柱になるという。公共工事による経済押し上げ効果は限定的とされる。日本の財政状況は厳しさを増しており、無駄遣いする余裕はない。便乗を極力排除し、必要性が高く、より効果的な事業に絞り込むべきだろう。

 これまでの新型コロナ対策を省みると、問題点や教訓がいくつもある。首相側近の官僚の思い付きとされる「アベノマスク」配布や、自営業者の持続化給付金を巡る不正受給の多発、各種支援事業における巨額の事務委託費などである。

 一方、雇用調整助成金の上限額引き上げなどのように期間延長や拡充が急務になっているものもある。既存施策についても手法や効果をきちんと検証し、今後に反映させるべきだ。

 雇用環境は厳しさを増している。コロナ禍に伴い仕事を失った人が国の集計で7万人を超えた。実際はもっと多いのではないか。希望退職の募集に踏み切る企業も目立ってきた。

 自助努力で乗り切るには限界がある。デジタル化推進など将来の成長に向けた布石も大切だが、まずはコロナ禍に苦しむ人々や企業に、真に必要な支援を届けることを重視してほしい。

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