行政不信の払拭が重要 ダム反対表明に関わった元副知事、小野泰輔氏

西日本新聞 熊本版 綾部 庸介

 2008年、熊本県の蒲島郁夫知事の川辺川ダム反対表明の文案作成に関わった元副知事の小野泰輔氏(46)が西日本新聞のインタビューに応じ、「ダム建設が進まなかった歴史を踏まえ、それ以外の治水策を追求する必要があった」と述べ、「ダムによって安全度は向上するが、住民の根底にある行政への不信感を払拭(ふっしょく)することが重要だ」と強調した。

 -「ダムによらない治水」を打ち出した背景は

 「(県政策調整参与だった)当時、球磨川流域を歩き回って感じたのは、水害で被害を受けてきた人たちが川を愛していること。球磨川や川辺川への住民の愛情は特別だった」

 「それまでダム以外の治水の議論が積み重ねられていなかった。いきなり『ダムしかありません』というのではなく、住民の感情や価値観を考慮して、極限まで他の手段を追求すべきだという判断だった」

 -その後の議論は進まなかったが

 「何もしなかったように思われているが、かさ上げや導流堤の建設などやれる対策を実施し、過去最大規模の洪水に耐えられるように努力してきた。しかし、線状降水帯の発生など、ここ近年の急激な気候変動への対応に議論を切り替えることができなかった。大きな反省点だ」

 -豪雨後、見解に変化は

 「個人的には、ダムは安全度を上げることにつながると考えている。白紙撤回の表明でも、ダムの治水効果を否定していない。当時の有識者会議の結果などでも効果は明白だった」

 「一方で、ダムへの懐疑的な意見の根底には、行政への不信という難しい問題がある。ダムは人が運用するものだ。例えば、洪水時の(緊急)放流。実際には自然な状態よりも多く流すことはないが、『本当にルールを守って操作するのか』と住民が疑念を持っていれば、災害発生後に『人為的な被害だった』との理解になってしまう」

 「物事として正しいだけでなく、そこに住民の信頼があるかが重要。豪雨災害後の今、住民を分断せずに、新たな治水策で安心してもらえるのであれば、ダムという選択肢もある」

 -豪雨後の議論に欠けていると感じる部分は

 「国は検証結果の根拠となる計算式などをもっと明らかにした方がいい。説明が怠りがちになるが、反対派も推進派も知っておくべき情報のはずだ」

 「川辺川ではダム計画が現在も生きており、建設の是非を巡る議論が再燃している。しかし、線状降水帯による豪雨災害を想定しない治水をしていていいのか、という場所は全国に相当数ある。球磨川だけが放置されているわけではない。日本全体として気候変動に対応できていない現状があると思う」

(聞き手=綾部庸介)

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