中国の長期戦略 独善は孤立を招くだけだ

西日本新聞 オピニオン面

 自国第一主義から再び国際協調路線へ-米大統領選で当選を確実にしたバイデン氏は、トランプ政権下で大きく変容した米外交の立て直しを宣言した。そこで注目したいのは、もう一つの大国、中国の動きだ。

 習近平国家主席(中国共産党総書記)は今のところ米大統領選への言及は避け、静観を装っている。ただ、民主化に背を向けた習氏の強国路線に国際社会が厳しい視線を向けているのも事実だ。米国の政権交代を機に中国にも強く自制を求めたい。

 中国共産党は先月末に開いた重要会議、第19期中央委員会第5回総会(5中総会)で、2035年までの国家建設目標を採択している。

 経済政策では内需拡大を柱としつつ外需も取り込む「双循環」を新機軸として打ち出した。新型コロナウイルス感染拡大による世界経済の低迷に加え、米国との貿易摩擦の長期化も見据えた「自力更生」の戦略だ。

 その上で、科学技術、ソフトパワー、軍事能力など国力全体の飛躍的向上を掲げ、建国100年となる今世紀半ばには米国をしのぐという長期戦略を改めて鮮明にした。22年に就任10年となる習氏の後継含みの人事は発表されず、習氏が長期政権に向けた基盤も固めたようだ。

 米国ではトランプ氏が大統領選の敗北を認めず、国政に混乱が生じている。習政権はその隙を突くかのように先週、香港立法会(議会)議員の資格要件を厳格化し、民主派議員を排除する新たな強硬措置に走った。暴挙と言わざるを得ない。

 海洋権益の強引な拡大や国内での言論弾圧、少数民族への抑圧的な施策なども改める気配はない。習政権はこれらを「中国の内政問題であり、他国の干渉は認めない」と主張している。しかし、国際ルールや人権を軽視する独善的な姿勢はいずれ、中国自身の孤立を招くことになる、と指摘しておきたい。

 「一国主義」に陥ったトランプ外交は随所で国際社会との摩擦を引き起こし、米国の威信を低下させてきた。バイデン氏はそれを踏まえ、欧米各国首脳との電話会談などで「脱トランプ」の姿勢をアピールし、温暖化防止への国際的な枠組み「パリ協定」への復帰も明言した。

 人種差別問題や深刻な新型コロナ禍など、米国が抱える課題も多い。それでも世界のリーダーとして信頼を取り戻していけば、中国の特異性は際立ち、国際社会による「中国包囲網」も強まっていくことになろう。

 「アメリカを再び世界中から尊敬を集める国にする」。バイデン氏は大統領選の勝利演説でこう述べた。中国にも重く受け止めてほしい言葉である。

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