過疎「卒業」人口減など基準変更で地方に警戒感

西日本新聞 総合面 郷 達也

 人口減少や高齢化が著しい過疎の自治体を国が財政支援する過疎地域自立促進特別措置法(過疎法)が2021年3月に失効するのを前に、自民党が検討中の新たな過疎対策法案の行方が注視されている。素案では、過疎の指定要件となる人口減少率などの基準を変更する考え方が浮上。指定から外れる市町村が出てくる恐れがあるとして、財政事情が苦しい地方側の警戒感が強い。

 「脆弱(ぜいじゃく)な財政力や炭鉱閉鎖による人口減少で疲弊を完全に克服できておらず、過疎対策の継続は不可欠だ。指定から外れても必要な額の過疎債(過疎対策事業債)と十分な措置を国にお願いしたい」。今月5日、オンライン形式の全国知事会議の会合で、福岡県の小川洋知事が切々と訴えた。

 総務省によると、過疎法の指定を受けている全国の市町村数は817。うち九州は144で、7県の全市町村に占める割合は61・8%と、全国平均(47・6%)を上回る=表参照。離島が多く、9割超が過疎市町村である鹿児島県の塩田康一知事も「これ以上、人が減ると消滅し、無人島になる島もある。わずかな人口変動で過疎地指定に影響するため、離島の取り扱いには配慮を」と求めた。

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 過疎市町村は、国が返済額の7割を肩代わりする仕組みの過疎債を発行し、医療・高齢者施設、インフラ整備などに活用できる。年間発行額は約4700億円(20年度)。他にも、公共事業の補助率かさ上げなど支援は手厚い。

 その指定要件は現在、(1)1960~95年の人口減少率が30%以上(2)96~98年の3カ年平均の財政力指数が0・42以下-などを満たすこと。根拠となる法律は1970年に議員立法で制定されて以降、10年ごとに要件などが見直されてきた。

 今回、焦点となっているのが、(1)の人口減少の起点となる「基準年」だ。現行法では、地方から都市部への人口流出のピークだったとされる60年の設定だが、自民党内の過疎対策特別委員会は「半世紀以上が経過し、社会経済状況に応じた見直しが必要」と問題提起。「人口流出がいったん収束した75年」「過疎地域の人口減少率が最小だった80年」のいずれかに変更する素案を示している。

 この条件で試算した場合、九州では佐賀県や宮崎県などの複数市町村が過疎指定から“卒業”し、将来的に国の財政支援を受けられなくなってしまう。

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 全国過疎地域自立促進連盟(東京)は20日、新法制定に向けた決起大会を開く。飯田昌三事務局長は、どの自治体も“留年”したいのが実情とした上で「食料供給や自然環境保全など過疎地域が果たす多面的、公益的機能は国民共有の財産。新法でも、現行の過疎市町村は継続して指定してほしい」と強調する。

 自民は、年内に過疎対策の施策大綱を取りまとめる予定。衆院ベテランは「人口減少は過疎地域だけで起きているわけではない。新法下で指定を外れる自治体も出るだろうが、代替の支援策をしっかり検討したい」と話す。 (郷達也)

相互扶助の農山漁村守れ

 九州大大学院法学研究院の嶋田暁文教授(行政学)の話 過疎地域の中には、数十年前から人口減と高齢化に苦しみ続けた結果、そのピークが過ぎ、逆に移住施策などが奏功して実質的な人口の社会増を実現しているところすら現れている。魅力的な教育環境、地域内で循環する経済の実現など、地域づくりを考える上で過疎地域に学ぶべきところは多い。過疎指定から外れることで自治体運営が困難化しないよう、国は十分な配慮をすべきだ。先行きが見えない不確実な時代に、相互扶助精神に富んだ農山漁村をなくしてしまうことは、日本全体の持続可能性のためにも避けなければならない。

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