石木ダム建設 13世帯反発、県と住民の溝深く… 

西日本新聞 社会面 岩佐 遼介 徳増 瑛子

 長崎県川棚町の石木ダム建設を巡り、事業者の県が予定地に暮らす13世帯の家屋を強制収用する行政代執行が可能になって、19日で1年。県は住民との対話を試みるが、積もり積もった県への不信感もあり、反対運動は一層頑強になっている。両者の溝は埋まりそうもなく、ダム建設では前例がない強硬手段に出るかどうかが焦点となっている。

 「計画見直しを前提にした協議であれば応じる」

 県土木部長は10月13日に現地を訪ね、住民側に中村法道知事と面会するよう依頼したが、受け入れられない要求を突きつけられて空振りに終わった。宅地の明け渡し期限(昨年11月18日)が過ぎて以降、県幹部が現地に赴いての依頼は6回目。面会は昨年9月以降、実現していない。

 「県の言うことは何一つ信用できない」。反対運動の中心にいる岩下和雄さん(73)は語気を強めた。

 不信の根っこにあるのが、ダム建設の現地調査に入る前の1972年に県と地元3地区が交わした「覚書」の存在だ。

 <建設の必要が生じたときは、改めて甲(3地区)と協議の上、書面による同意を受けた後着手する>

 住民は「合意なしに建設することはない」とみて現地調査を容認。だが県は調査で「建設可能」と判断すると、書面での同意がないまま手続きを進める。82年には機動隊を動員して測量調査を強行。小中学生や高齢者も抱え上げて排除した。

 「最初から県はだますつもりだった」。岩下さんはそう考える。

 一方、県は覚書について「住民の理解の上で事業を行うという基本的な考え方について合意したもの」と説明。既に8割以上の地権者が立ち退きに応じ、反対住民の理解と協力が得られるように長年努力を続けてきたことを理由に「覚書に反するような手続き違反はない」との認識を示す。

 今年10月には国の事業認定取り消しを求める訴訟で住民側の敗訴が確定。県は現地で水没する県道の付け替え工事も進めるが、住民は支援者と現場に連日座り込み、工期は3回の延期を余儀なくされた。

 県は本年度当初予算に初めて本体工事費を計上しており、中村知事は12日の記者会見で「年度内に着工したい」と強調。着工は代執行対象の家屋や宅地を避けて行うことは可能だが、実行すれば住民側のさらなる反発は必至だ。

 中村知事は代執行について、関係部局に「住民の気持ちを考えてほしい」と伝えているという。県幹部は「やらないと決めたわけではない。代執行はあくまで最終手段で選択肢の一つだ」と話す。 (岩佐遼介、徳増瑛子)

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