RCEP 九州の「地の利」生かそう

西日本新聞 オピニオン面

 貿易額で世界の3割、日本の5割近くに及ぶ大型の経済連携協定(EPA)がまとまった。日本、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)などの15カ国が署名した「地域的な包括的経済連携(RCEP)」協定のことだ。

 2013年以降、各国が50回を超える交渉を重ね、ようやく妥結に至った。新型コロナウイルスの大流行で世界経済が急減速し、米国などで自国第一の内向き志向が強まる中、自由で開かれた巨大経済圏が誕生することをまずは歓迎したい。

 日本はこれまでEPAや自由貿易協定(FTA)の交渉を進め、環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)とのEPA、日米貿易協定などが発効している。RCEPは日本が署名した21番目の協定だ。参加国の手続きが進み次第発効する。

 従来と決定的に異なるのは、隣国である中国、韓国も加わった初めての協定である点だ。歴史的な関係が深く、安全保障上も重要な位置にある両国とのEPAには大きな意義がある。

 日本の貿易相手国として中国はトップ、韓国は3番目だ。地理的にも近く両国との交流が盛んな九州では、両国の存在感は他の地域より大きい。

 RCEP発効で、日本の工業品の多くが段階的に関税撤廃になる。中国向け鉄鋼製品や、韓国などへのゴム製タイヤ、自動車部品などもこれに含まれる。九州からの輸出の追い風になることは間違いない。

 九州経済産業局によると、早速、地場メーカーからRCEPに関する問い合わせが入るなど地元産業界の関心も高い。発効までに、地の利を生かす戦略を九州全体で練り上げたい。

 ただ課題も少なくない。

 全体の関税撤廃率が品目数ベースで91%にとどまり、100%に近いTPPや日本とEUのEPAに見劣りする。関税撤廃までの期間が20年など長いものも目立つ。発展段階が異なる各国の国内産業保護のためだが、迫力不足の面は否めない。

 とりわけ、交渉半ばで離脱したインドが復帰しなかったのも残念だ。経済大国となった中国の影響力を抑えるためにも、日本はインドにRCEP復帰を粘り強く説得する必要がある。

 成長市場アジアでのRCEPの実現は、世界に広がる保護主義をけん制する効果もある。

 特に、米国第一主義を掲げるトランプ政権はTPPからの離脱を強行した。バイデン氏の政権になっても、国内優先の政策が当面は続くとみられる。バイデン氏はオバマ政権下でTPP交渉に関わった経緯がある。米国のTPPへの復帰に向け、日本も働き掛けを強めたい。

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