「内向型」もう悩まなくていいよ 強みに変えるコンサル 堤ゆかり

シン・フクオカ人(10)

 生きづらさの原因を知るだけで、目の前の霧が晴れていくことがある。

 そうか、私は「内向型」なんだ。闘ったり乗り越えたりする必要はないんだ。そう気づくまで、自分探しや天職探しにもがいてきた。

 堤ゆかり、35歳。転職の経験は2度ある。

 最初の転職で、学生時代からの念願だったブライダル業界に入った。カップルの接客に営業にと充実しているはずなのに、ある朝、体が動かなくなった。深く考えて行動するタイプで、1人で抱え込みすぎたせいだろう。適応障害だった。「やりたい仕事でさえ満足にできない、駄目な人間なんだ」。ただただ挫折を味わった。

 次に就いた事務職はそれなりに順調だった。でも、自分でなくてもできる仕事のようで、何か足りない。「副業してみたら?」。夫のアドバイスが、一つの転機となった。

    ◆    ◆

 「性格に合ってそう」と勧められるままに、衣料品のインターネット販売を始めた。これが性に合った。

 自分自身でお金が稼げる新鮮さ。頑張った分が対価となる喜び。電話を取ったり、人に話しかけられたりして集中力が途切れることもない。「1人静かに仕事ができると、こんなに快適なのか」。組織に合わせて無理をしていたことに気づいた。5カ月で収入が本業を追い越し、会社を辞めて独立した。

 「もっと自分の強みを伸ばしたい」。そう思って入った起業スクールで出会ったのは“キラキラ女子”たち。エネルギッシュでカリスマ性があって、どんどん人脈を開拓していく。自分もそうならなきゃと、いろんな異業種交流会に出てみては、どっと気疲れしてベッドに倒れ込んだ。

 募る劣等感を乗り越えようと、本を読みあさり、講演会に足を運んだ。そんな中でようやく出合ったのが、「内向型」というキーワードだ。

 心理学者ユングは、人の性格を外向型と内向型に分類した。外向型は関心が自分の外側に向かい行動的、内向型は内省的で熟考する傾向がある。こうした特性は脳の働きが影響しており、外部からの刺激の受け方に違いがあるとされる。

 自分は明らかに内向型。負けず嫌い精神を内に秘めつつも、引っ込み思案で慎重派、要領が悪い-。「欠点」だと思って悩んでいたことが、単なる「違い」だと分かって、心底ほっとした。

    ◆    ◆

 独立から5年たった今、「内向型コンサルタント」として活動する。

 内向型とは何か。どうすれば強みに変えられるか。心理カウンセラーの資格も取り、副業や独立に向けたアドバイスをしている。

 「自分らしさを生かして働く方法を一緒に考えたい。もし組織にいるのがつらいなら、別の選択肢もあることを知ってほしい」

 軽妙なライブトークはできないけれど、考え抜いた言葉を動画で発信する。メールや会員制交流サイト(SNS)で相談に乗る。オンライン講座も作った。たくさん集客するよりも、一人一人と向き合うスタイルだ。「共感が持てます」「救われました」という反応に手応えを感じている。

 コンサルティング実績は300件を超え、ライターやカウンセラー、動画編集者になった人もいる。「ゆかりさんに出会っていなかったら、自分を好きになれなかった」。そんな言葉が一番うれしい。

 2年前には生まれ育った東京を離れ、何のゆかりもない福岡市に移住した。夫も内向型のフリーランスで、パソコンさえあればどこでも働ける。人の多い東京より、自然が身近で落ち着く地方へ。ソフトバンクホークスの応援に行きやすいことも、大きな決め手となった。

 時々ふと考える。もし、あのまま仕事から逃げていたら、どうなっていただろう。「専業主婦になりたい」と、夫に相談した時のことだ。

 答えは一刀両断だった。「僕がいなくなっても生きていけるように、仕事を持って自立してほしい」

 夫が背中を押してくれたから、自分の可能性が大きく広がった。今は私が背中を押す側。

 「私だからできることで、誰かの役に立ちたい」

 =敬称略(山田育代)

関連記事

福岡県の天気予報

PR

PR