「60万円」に倍増?新婚生活費用補助、実施は15%のみ 広がり不透明

西日本新聞 くらし面 川口 史帆

 「結婚給付金が倍増するとの報道を見たが、私のめいはもらっていない」。本紙「あなたの特命取材班」に福岡市内の男性から困惑する声が寄せられた。本紙が9月21日付朝刊で「新婚生活費用補助 上限60万円に倍増」の見出しで報じた国の少子化対策事業のことだ。会員制交流サイト(SNS)でも「結婚したら60万円もらえる!?」と話題になった。だが実は、全員が補助金をもらえるわけではない。どんな制度か、詳しく調べた。

 制度の正式名称は「結婚新生活支援事業」。経済的理由で結婚をためらう人を後押ししようと内閣府が2016年度から実施している。夫婦ともに34歳以下で、世帯年収が約480万円未満の新婚世帯が対象だ。結婚時の引っ越し代、住宅購入費や賃貸費(家賃や敷金・礼金など)として1組最大30万円を補助する。国はこの上限を来年度、60万円に引き上げる方針。対象も39歳以下、世帯収入540万円未満に拡大する。

 ただもともと補助は全国一律ではない。大前提として、結婚生活を送る居住地の市町村が同事業を実施していなければならない。内閣府によると、20年度に実施しているのは全国289市区町村。全体の15%だ。

 九州では福岡県(全60市町村)が12市町で最多。続いて長崎県(同21)8市町、鹿児島県(同43)7市町、熊本県(同45)6市町村、大分県(同18)4市町、佐賀県(同20)3市町、宮崎県(同26)2町=表参照。福岡、北九州、熊本の3政令市や各県庁所在地、中核市はいずれも実施していない。

 補助金の負担は国と市町村の折半だ。福岡県子育て支援課の信川茂樹係長は「人口規模の小さい自治体が若い世代を呼び込んで人口を増やそうと事業を活用する傾向が強い。都市部は定住後の子育て支援策などを優先している」と話す。

 支援内容や要件も市町村によって異なる。福岡県那珂川市は市の指定地域で住宅を購入した世帯のみが対象で、上限は20万円。同県うきは市は住宅の購入も賃貸も対象で、上限は30万円。年齢も「婚姻届を出した時点で夫婦どちらかが34歳以下」としている。

 同県吉富町は民間の賃貸住宅が対象で、引っ越し費用6万円と月1万円の家賃補助を最大3年間受けられる。年齢は「夫婦の合計年齢が80歳未満」。担当者は「未実施の近隣自治体と比較して吉富町を選ぶ夫婦もいる。若い人を呼び込む力になっている」と話す。

      *

 話題になった「60万円」は内閣府が来年度予算の概算要求に盛り込んだ。金額の倍増と条件緩和で、より多くの市町村に取り組んでもらう狙いだ。

 一方、補助の上限を倍増すれば、その半額を支出する市町村の負担も倍増する。人口規模が大きければ対象者も増え、費用はかさむ。今後、実施自治体がどれほど増えるかは不透明だ。福岡県は現状の負担割合では多くの自治体が実施するのは難しいとして、国の補助率を増やすよう要望しているという。

 福岡市では事業を実施する計画はない。担当者は「流産などを繰り返す不育症の検査・治療費助成や保育所の整備、子どもの医療費補助などに重点を置き、長期的な家族の支援策を講じたい」と話している。 (川口史帆)

PR

くらし アクセスランキング

PR

注目のテーマ