大学進学を思い描けない子…養護施設出身者、広がる支援「選択肢を」

西日本新聞 くらし面 本田 彩子

 児童養護施設出身の若者の進学を後押しする取り組みが全国の大学に広がりつつある。彼らは一般に大学進学率が低く、多くが18歳までに施設を出て就職する。頼れる家族もないまま早くに独り立ちし、仕事や生活につまずくケースが少なくない。大学側は将来の選択肢を増やし、社会での自立まで支えたいという。

 筑紫女学園大(福岡県太宰府市)は2021年度入試から、児童養護施設や里親家庭の出身者を対象とした推薦入試を導入する。初年度は人間科学部社会福祉コースでの実施(定員若干名)だが、その後は全学部への拡大を検討している。

 厚生労働省によると、18年度末に高校を卒業した児童養護施設出身者の大学などへの進学率は14・0%で、高校卒業者全体(51・9%)の4分の1程度。さらに一般の学生と比べ中退の割合も多い傾向にあるとされる。同大の大西良准教授(社会福祉学)は「進学や卒業を阻んでいるのは経済的理由だけでなく『大学を出て希望の職業に就く』といったロールモデル(模範)となる人物が身近にいないことが大きい」と語る。

 金銭面では従来、入学金や授業料の減免は各大学などに任され、給付型奨学金も対象はごく一部の学生に限られていた。だが今年4月、国の修学支援制度が拡充され、施設出身などの学生の大半が入学金や授業料の減免、給付型奨学金を受けられる見込みとなった。

 一方で、ロールモデルの不在などからそもそも自分の将来像として「大学進学」を思い描けない子どもも多く、施設によっては進学を勧めないケースも少なくないという。「大学に入っても中退すれば奨学金など借金だけが残る。それなら大学に行かず就職した方が子どものためと考える施設もある」(大西准教授)

 大学に行けず希望の就職もできない。大学に入っても中退し、その後は誰も助けてくれない-。「そんな状況が貧困の連鎖を生んでいる」。そう指摘する大西准教授は「入学して終わりではなく、むしろ『入学前』と『入学後』の支援に力を入れたい」と語る。

 同大はこれまでも年2回、施設の子どもを招いて学生との交流を行ってきたが、今後は大学職員や学生が施設に出向くことも検討。入学後は授業選択や資格取得などの助言を行うほか、1人暮らしに必要な金銭管理なども個別に支えるという。大西准教授は「まずは1人でも多く成功のモデルを作り、その次の子どもにつなげたい」と話す。

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 全国的にはほかに、青山学院大(東京)が18年度入試から、児童養護施設出身者を対象とした推薦入試枠を全学部で行っている。

 入学者は学費を全額免除した上で月10万円の奨学金を支給。入学後は所属する学部・学科の教員が定期的に面談し支援する。同大は「毎年入学実績があり、少しずつだが志願者数も増えている」という。

 自治体と共同で取り組む大学もある。名古屋市立大は13年度から市内の児童養護施設や里親家庭などの子どもを招き、研究室を訪問したり学食で食事したりするなど学生生活を体験する催しを実施。今年は新型コロナウイルスの影響で規模を縮小したが、中高生20人が参加した。同大の谷口由希子准教授(社会福祉学)は「進学だけが目標ではない。今の生活の先に何があるのか、子どもが『今』と『将来』を考えるきっかけを作りたい」と話した。 (本田彩子)

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