対話から前へ進む力コロナ禍の中でアトリエ開放 79歳の思い

西日本新聞 筑豊版 安部 裕視

 「コロナ禍の中、癒やしと安らぎを」と、絵画団体の示現会(本部・東京)正会員の花井静子さん(79)=福岡県宮若市龍徳=が市内に持つアトリエを憩いの空間に変え、訪問者を迎え入れている。毎週木、金、土曜日午前10時から午後4時まで。花井さんは「人々の心がすさみ、萎縮していると感じる。私が今できることをやりたい」と力が入る。

 平屋のアトリエは、飲食店やホームセンターなどが立ち並ぶ同市本城の一角。大きなケヤキが1本立つ。屋内には、約20枚の作品を飾っている。示現会の綱領である「清新な具象画の創造」に従い、熱心なクリスチャンとしての信念がこもる教会の絵が中心だ。

 55歳と75歳で大病を患い、試練を受けるたびに自分が強くなったと感じる。新型コロナウイルスが全国で再拡大する中、「誰かのために」という強い思いが、湧き出ているという。「人々、特に若い人たちが未来を描きにくくなった時代に迎えた試練。乗り切るための何かをここで見つけ出してほしい」と呼び掛ける。

 がんと闘いながら、55歳で「孫の顔を描き残したい」と油彩を始めた。師事したのは、直方市で活動した故赤星月人さん(2007年に死去)。反戦・平和の願いを込めた数多くの絵画を制作した画家だ。学び始めたころ、静子という名前が由来か、赤星さんに「『しいず』と名乗りなさい」と言われたという。

 広辞苑(第七版)によると、「しいず(為出づ)」とは「事をしはじめる」「作りあげる」の意を持つ。雅号にはしなかったが、師からの贈り物として大切にしてきた。今月6日からアトリエを開放するにあたり、「Shiizu」と名付け、扉に「ご自由にお入りください」と掲げている。

 これまで悩みを持つ人が訪れては、対話をして励ましてきた。来月半ばで80歳。「いろんな人の話に耳を傾けたい。対話から前へ進む力が生まれれば。何度来てもらっていい」。来春予定の示現会展に出品する新作の制作に励む一方で、「Shiizu」を訪れる人の笑顔を思い描きながら、扉が開くのを待つ。 (安部裕視)

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