「湯川秀樹の戦争と平和」 小沼通二著

西日本新聞 根井 輝雄

 日本人初のノーベル賞を受賞した湯川秀樹(1907~81)の足跡をたどる。湯川日記の解読を続ける著者が、その思想と行動を簡潔にまとめた。

 戦前から海外でも有名になった理論物理学者の湯川だが、戦時中は軍事研究に関与していた。日記では、核兵器開発を検討している陸海軍の幹部と、定期的に会合した様子を記す。

 戦後は、その反省から「健全な批判力を持つことが、どんなに大切であるか」などの文章をしたためた。そして、東西冷戦下で大国が核実験に明け暮れる中、世界の科学者とともに平和を訴える活動に取り組んだ。晩年まで情熱は衰えなかったという。

 日本学術会議の任命問題などで、政治と学問の関係が揺らいでいる。学問の成果は全人類の財産であり、一国の政策に左右されてはならない。湯川秀樹を通じて、そのことを再認識した。(根井輝雄)

「湯川秀樹の戦争と平和」 小沼通二著(岩波ブックレット・682円)

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