【動画あり】中国「貧困ゼロ」地域にひずみ 期限迫る国家目標 地方で成果水増しも

西日本新聞 国際面 坂本 信博

 【福建省寧徳・坂本信博】中国の習近平国家主席が掲げる国家目標「脱貧困」の達成期限を年末に控え、地方政府が貢献度をアピールしようと躍起になっている。地域レベルで「貧困人口ゼロ」の目標を実現するため、経済振興に過剰な投資をして負債を抱えたり、成果を水増しして報告したりする事例も出ている。背景には、地方幹部の人事に直結する目標達成への強い重圧がある。

 「中国扶貧第一村(中国で最初の貧困扶助の村)」。福建省寧徳の山あいにある赤渓村の入り口にそう記されていた。約1800人の村民は少数民族ショオ族と漢族が半々。茶畑の中に鉄筋コンクリートの集合住宅が立ち並び、特産品の白茶を売る店が軒を連ねる。

 村は1980年代前半まで、かやぶき小屋に住む人々が山菜を主食にする貧しい地域だったが、山奥からの集団移転やインフラ整備、農業指導を推進。茶の現地加工に取り組んでブランド化に成功したほか、山肌にガラス張りの山道を造るなど観光客誘致にも取り組む。村のリーダーの杜家住さん(48)は「84年に166元(約2600円)だった村民の平均年収が、2019年には2万2700元(約36万円)に増えた」と誇らしげに語った。

 中国共産党は20年までに「小康社会(いくらかゆとりのある社会)を全面的に実現する」との長期目標を掲げ、1人当たりの年間可処分所得が20年時点で約4千元(約6万3千円)以下の「絶対貧困人口」をゼロにする政策を進めてきた。脱貧困は反腐敗と並ぶ習氏の看板政策。一党支配の正当性を高める狙いもあるとされる。

 寧徳は、88~90年にこの地域のトップを務めた習氏が脱貧困に取り組んだ「原点の地」(地方政府幹部)。85年時点で77万5千人いた貧困人口が今年でゼロになったという。地域に複数の脱貧困展示館があり、成果を誇っていた。

 「成功例」の一方で、深刻な事態も起きている。

 中国メディアによると、貴州省の独山県は脱貧困のために高さ約100メートルの巨大建築物や、大学が10校集まる文教地区の整備計画を進めたが、新型コロナウイルス禍による中国経済の減速に伴って資金調達が難航。負債が歳入の40倍に当たる400億元(約6300億円)に達したという。

 貴州省の別の県では、生活水準向上のために計画した貧困地域住民の移住が3割しか実現していないのに、完了したと報告していた事実が露呈。広西チワン族自治区では、貧困対策関連の統計データを現場レベルで不正に操作していたと中国メディアが報じた。中国メディア関係者は「地方政府トップにとって目標を達成できるかどうかは自身の評価に直結する。プレッシャーは大きい」と語る。

 中国全体では、15年は約7千万人だった貧困人口が19年末に551万人に減ったとされる。習指導部は地方で不正がないか監視を強めているが、地域によっては見せかけだけの「脱貧困」に終わる恐れもある。 

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