今年鬼籍に入った一人に中江滋樹さんがいる。2月に…

西日本新聞 オピニオン面

 今年鬼籍に入った一人に中江滋樹さんがいる。2月に東京の木造アパート火災で焼死した。1980年代に「兜町の風雲児」と呼ばれた。享年66。生活保護を受けていたという

▼「投資ジャーナル事件」で知られる。投資家約7800人から580億円を集め、一部を返せず詐欺容疑で捕まるまでの間、札びらを切ってバブル崩壊前夜を闊歩(かっぽ)した。一冊の本になりそうな話を数多く残した

▼本になった金融スキャンダルといえば「光クラブ事件」が浮かぶ。学徒出陣し、東大に復学した山崎晃嗣の闇金融事件だ。これを題材にした高木彬光の小説「白昼の死角」は映画にもなった

▼今年が没後50年の三島由紀夫も、山崎をモデルに小説「青の時代」を書いていたことを最近知った。「仮面の告白」を発表した翌50年のこと

▼三島は山崎と同じころ同じ大学にいて、同じ授業を受けていたという目撃証言も…とノンフィクション作家保阪正康さんの著書「真説光クラブ事件 東大生はなぜヤミ金融屋になったのか」(角川書店)にある

▼それによれば山崎の命日は49年11月25日。服毒自殺。三島は70年の同じ11月25日に自衛隊に乗り込んで割腹自殺した。「精神と肉体の一体化」が求められた戦争を経た2人の、奇妙な部分的交差。山崎は「一体化からは一歩距離を置くことに専念」し、三島は「一体化に自らを賭けた」と保阪さん。三島を考える材料が一つ増える。

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