経営と絵筆二足のわらじ 2度目の日展入選 司グループの上田龍子さん
熊本県内を中心にホテルやゴルフ場、パチンコ店、ボウリング場を展開する司グループの名誉会長上田龍子さん=玉名市=の油絵作品が、改組新第7回日展で2度目の入選を果たした。夫の弘司会長(83)と共に経営の一翼を担いながら、仕事を終えると絵筆を握る日々。「継続は力なり」を信条に、二足のわらじでキャンバスに向かい続けた情熱が花を咲かせた。
上田さんは、個人経営の洋装店から始め、夫婦の二人三脚で司グループを設立した。絵を始めたきっかけは30年前、現場主義でグループ各店を一軒一軒駆け回り、休日が全くなかった上田さんに、子どもから放たれた一言。「仕事ばかりしよったら、寂しか老後になるよ」
ハッとなり、浮かんだのが、小さい時から好きだった絵画だった。文化スクールに通い日本画から始めたが、精密な表現が性格に合わず油絵に変更。洋画家の故日野耕之祐さんに師事してから、めきめき力が付いたという。
描くのは、仕事後の約4時間と日曜の終日。体は疲れていても、絵に向き合うと「ほっとする」と言い、「その時間、仕事のことは全く忘れてますね」。
入選作は、世界文化遺産の万田坑(荒尾市)をテーマにした「機械展示室(万田坑3)」。巻き上げ機室の窓から注ぐ光に浮き上がる機械群を表現した。絵の具を何度も塗り重ね、1年がかりで仕上げたという。
17年間、さまざまなテーマで日展に出品を続け、2年前に念願の初入選を果たしたのも、万田坑を描いた作品だった。7年前、世界遺産の登録前に出合って以来、描き続けている。
「かつてここで労働者が一生懸命働き、活気にあふれていた。その時代の名残を伝えたい、機械を生き生きと表現したいと思いながら描いています」 (宮上良二)