“博物館浴”健康効果は 唾液や血圧変化測定 医療の活用目指す実験

西日本新聞 社会面 今井 知可子

 博物館や美術館で作品を鑑賞するとリラックスする-。誰もが何となく感じている感覚をデータで表し、治療の一環として高齢者たちの健康づくりに生かそうとする試みが進んでいる。九州産業大(福岡市東区)地域共創学部の緒方泉教授ら有志は今冬、血圧や唾液などからストレスの変化を調べる実証実験を本格化する。「アートの力を心と体に浴びる『博物館浴』として提案し、もっと気軽に博物館に足を運んでもらいたい」と期待を込める。

 カナダや英国の医師が処方箋に「美術館訪問」と記す試みが始まるなど、博物館や美術館の医療福祉分野への活用は国際的に注目されている。その一方で、日本には5700を超す博物館や美術館があるにもかかわらず、国民1人あたりの年間利用回数は平均1・1回にとどまり、気軽に行ける場所にもなっていないのが現状だ。

 国内で「博物館浴」を治療として定着させるにはデータの蓄積が必要として、九産大美術館長も務める緒方教授らは10月、高齢者による博物館の活用法を考える市民講座の参加者を対象に、実証実験を実施。参加者は(1)美術館で作品鑑賞(2)気に入った作品について話し合う(3)作品の印象を即興曲にして合奏-を体験し、その前後に、ストレス変化を表す唾液中の消化酵素アミラーゼ濃度や血圧を計測した。

 その結果、(1)の作品鑑賞と(3)の合奏後には、ストレスの高さを示す数値が下がったという。心理状態について記述する測定方法では「爽快感がある」という項目が(1)~(3)を体験した後、その前より倍近い評価となっていた。

 12月から来年1月にかけ、福岡県内の博物館や美術館計5カ所で、体験内容と参加者を変えながら実証実験を行う予定。このデータを分析し、医療機関と連携しながら健康づくりに生かす方法を検討する。

 緒方教授は「地域医療に博物館が役に立つことを実証して、温浴施設に行くように『博物館浴に行こうか』と言ってもらえる場にしたい」と話す。 (今井知可子)

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