日本の状況「まるでコント」 核禁条約発効決定 タブーなしで議論を

西日本新聞 社会面 金沢 皓介

 核兵器禁止条約の批准が50カ国・地域に達し、来年1月の条約発効が決まって24日で1カ月。「核廃絶への第一歩」と期待される一方、核保有国や米国の「核の傘」に頼る日本は参加せず、国内の関心もいまひとつだ。そんな状況を「まるでコント」と皮肉る若手芸人がいる。教育現場へ社会問題の出張授業を続けるお笑いジャーナリストたかまつななさん(27)。高校生平和大使を務め、核廃絶運動にも携わったたかまつさんの思いとは。 (聞き手は金沢皓介)

 「核兵器を落とされて大変だった」。唯一の被爆国の日本はそう訴えてきたのに「核兵器をなくそう」という条約には不参加。お笑いのネタに使える、って感じます。核廃絶を訴える国が核の傘に守られている現実はすごくおかしい。

 「条約の発効はうれしいけど、日本がいないのは悲しい」が率直な感想ですけど、日本の矛盾に対してどのような道を歩めばいいのか、答えを持ち合わせていません。日本中で答えを持つ人もほとんどいないと思いますけど…。

 毎年夏、報道で核兵器の恐ろしさや戦争の悲惨さが伝えられてきましたが、若い世代が関心を持っているかは疑問です。条約の発効が決まったことも知らないのではないでしょうか。

 高校1年の時、広島で被爆者からこんな話を聞きました。「若者に『原子爆弾が落とされたのが公園で良かったですね』と言われた」と。若者に悪気はなく、原爆被害の実相に無知だったわけです。これを機に「知識をつけたい」と勉強し、平和大使になりました。

 「あなたの国は核兵器を持っているじゃない」。大使としてドイツで核廃絶の署名活動をした際、こう言われて拒否られました。核の傘に守られている現実を突き付けられ、衝撃でしたね。共に活動する人に「核抑止力についてどう思う」と聞いても怒られて、議論になりません。「同じ考えの人に訴え続けても意味がない」と実感しました。

 核廃絶の議論は、自分の立場に沿ったポジショントークが多いです。議論すら拒絶する「核アレルギー」を持つ人も少なくない。「結論は分からない、だからこそ議論しましょう」というのが私の立ち位置です。

 米国では原爆投下の是非を子ども同士が討論するそうです。私は学校で踏み込んだ議論をした記憶がありません。「原爆が投下され悲惨でかわいそう」という授業では戦争から何も学んでいないに等しい。ファクト(事実)を基に議論することが必要です。

 例えばですが、私は出張授業でヒトラーのユダヤ人虐殺を説明する時、強制収容所の写真を使って「民主主義は私たちの使い方次第だよ」と話します。「びっくりした」という声もあれば、しんみりとなることも。どんな文脈で伝えるかが大事だと思うんですね。

 教育に必要なのは自分たちで社会を変えられるという「手触り感」。生徒会で校則を変えるなどの主権者教育から始め、戦争や核廃絶の問題も子どもの柔軟な発想を止めず「タブーなし」で議論したらいいのに。私ももっと勉強して核廃絶の出張授業に挑戦したいですね。何か発言すると、反対の立場の人からすぐたたかれて自由に言いにくい社会だけど、議論すらできないのはもっと怖いから。

◆たかまつ・なな 横浜市出身。2011年、核兵器廃絶を訴える「高校生平和大使」を務めた。お笑い芸人として活動し、政治や時事問題についてユーチューブなどで発信する傍ら、若者と政治をつなごうと学校への出張授業にも取り組む。

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