タイ反体制デモ「アメリカ陰謀論」対立悪化の一因

西日本新聞 国際面 川合 秀紀

 【バンコク川合秀紀】タイの政権与党と王室支持派が国内で激化する反体制デモについて、政権転覆をたくらむ米国などの西側諸国が背後で支援しているとの批判を展開している。根拠が乏しい「陰謀論」の域は出ないが、国会論戦や会員制交流サイト(SNS)で盛んに取り上げられ、政権と反体制派の対立を悪化させる一因となっている。

 「米国など外国勢力の支援を受けた案は認められない」。17~18日、国会での憲法改正案審議で複数の与党議員がこうした主張を繰り返した。やり玉に挙げられたのが、米国系企業や非営利団体が支援する市民団体「iLaw」の改憲案。提出された七つの改憲案のうち唯一、王室に関する条文見直しが可能な案で反体制派が支持を表明していたが、否決された。

 反体制派と「外国勢力」を結びつける陰謀論は、学生らが王室改革の要求を8月に始めると同時に広がった。反体制派が欧米系の非営利団体などから資金支援を受けているとのチャート図が拡散され、閣僚の一人は9月末、学生らについて「タイをコントロールしたい海外の超大国に利用されている」と主張。王室支持派も8月末から複数回にわたって米国大使館前でデモを行い「不当な政治介入」と批判した。

 こうした事態を受け、米大使館は9月半ばに「米政府はタイでの抗議活動に資金などの支援を提供していない」との声明を発表。反体制派や「iLaw」も外国政府の介入を「根拠がない」と否定するが、その後もSNSやテレビで頻繁に取り上げられる。

 10月21日には、中国共産党系メディアの環球時報(英語版)が「タイデモの裏に見えない西側の手」との見出しを付けた記事を掲載。中国国防科技大の軍事外交部門の研究者が執筆した論評で、中国側が西側諸国が支援したと主張する香港デモとの類似点を挙げ「旧ソ連などで革命を操ってきた米国の慣行に沿っている」と指摘した。

 タイは戦後、米国の同盟国として発展したが近年は保守派を中心に米国離れが進む。特にプラユット氏が軍事クーデターで実権を握った2014年以降、軍事援助を一時凍結した米国との関係が悪化する一方、中国に急接近。最近の米中対立の構図が、タイにおける強権的な政権と反体制派の対立に重なって見えるのは否めない。

 だが陰謀論について、ある外交筋は「冷戦期ならいざ知らずかなり無理がある」と一蹴。21日のデモに参加した大学2年女子のクルームさん(21)は「ヘルメットもゴーグルも自分で買った。デモに賛同する人がさらに増えるのを恐れ、政権が陰謀説を広めているだけ」と苦笑した。

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