1960年。下筌(しもうけ)ダム(熊本、大分県)建設に反対する男性は…

西日本新聞 オピニオン面

 1960年。下筌(しもうけ)ダム(熊本、大分県)建設に反対する男性は、蜂の巣城とも呼ばれた砦(とりで)を築き頑強な抵抗を続けた。マスコミ嫌いも徹底。日参する報道各社を全てはねつけた

▼記者は手紙を送り付ける。「あなたが意地の戦いと言うなら、私にも新聞記者の意地があります」。いくら拒まれても取材を続けてみせる。一徹な思いが男性の心を揺らしたのだろう。「ついてこい」と、ある時から1人だけ自由な出入りを許される

▼佐世保海上保安部(長崎県)を訪れた記者はいつにない雰囲気を感じた。ドア越しに室内の声に耳を傾ける。「(通常の)10倍から20倍だ」。佐世保に入港した米原子力潜水艦の放射能漏れを伝える大スクープになった

▼失敗もある。死者237人を出した山野炭鉱(福岡県)の事故を追っていた記者は、会社の責任を問う警察の処分を他社に抜かれた。「どうして夜回りに来なかったの。待ってたのに」。刑事の言葉に「恥、手抜き、怠慢…」と胸中を明かしている

▼登場した記者はみんな本紙のOBである。今月、本社から「現場 記者たちの九州戦後秘史」を出版。一部を紹介した

▼北九州市誕生、よど号事件長崎大水害や連載企画など52本の秘話を収録。手前みそは差し引いても、歴史の「現場」に立ち会った記者の生々しい息遣いが伝わってくる一冊である。問い合わせは本社ビジネス編集部=092(711)5523。

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