日中外相が会談 五輪、経済打算の〝友好〟演出

西日本新聞 総合面 坂本 信博 古川 幸太郎

 菅義偉政権下で初の日中ハイレベル外交折衝となった中国の王毅国務委員兼外相の来日は、中国側の意向で実現した。2022年の北京冬季五輪を「国威発揚の機会」(外交筋)と捉える中国にとって、来夏の東京五輪・パラリンピックが予定通り開催されるのが望ましく、日本との関係を維持しておきたい思惑がにじむ。米国の政権交代の端境期を突き、「対中包囲網」にくさびを打ち込む狙いもありそうだ。

 24日夜。茂木敏充外相と会談した後の共同記者発表で、王氏は新型コロナウイルス対策の連携強化などに加え「互いに協力して東京五輪、北京五輪という二つの盛大なイベントを成功させることで一致した」と強調した。

 22年秋に、習近平国家主席の続投が最大の焦点となる中国共産党の党大会が控えており、約半年前の北京五輪は「最重要課題」。その成功に向け、中国は「日本のウイルス防疫対策を参考にしようと、東京五輪に大量の人員を送り込んで情報収集する計画がある」(日中外交筋)という。王氏は「多国間主義を守り、新時代の要請に合致する中日関係の構築を推進する」とも述べた。

 もう一つ、中国が神経をとがらせるのが米国のバイデン次期大統領の外交姿勢だ。民主党は伝統的に人権面を重視しており、香港情勢やウイグル族を巡る問題では日本を含む同盟国に対中共同歩調を求めてくるとみられる。

 米国の機先を制するかのように習氏は先週、突如として日本が主導権を担ってきた環太平洋連携協定(TPP)への参加意欲を表明。日米、オーストラリア、インドによる「自由で開かれたインド太平洋」構想をけん制し、アジアでの「立ち位置を確保したい」(外務省幹部)との意図を打ち出した。

 これに対し、日本は米国と足並みをそろえ、沖縄県・尖閣諸島周辺や南シナ海における中国の海洋進出の動きを容認できないとの立場を堅持。この日の会談でも、茂木氏は中国公船が領海侵入を繰り返していることへの懸念を王氏に伝え、具体的な対処を求めた。今春から延期され、扱いが難しくなっている習氏の国賓来日には触れず、先送りした。

 隔たりが大きい外交・安全保障面とは異なり、両国は新型コロナ禍で被ったダメージの回復を図る上で経済的な結びつきをより強めたいとのベクトルでは一致する。ビジネス関係者の往来を月内に再開する「実利」で合意し、日本政府関係者は「日中関係は、お互いの戦略的な『利益』を重視した関係が続くだろう」と予測した。 (坂本信博=北京、古川幸太郎)

PR

政治 アクセスランキング

PR

注目のテーマ