発案側の思惑に反し、定着しなかったものは少なくない。例えば…

西日本新聞 オピニオン面

 発案側の思惑に反し、定着しなかったものは少なくない。例えば「省エネルック」。半袖の背広を愛用した羽田孜元首相の姿も今は昔。首都圏を走るJRの電車の愛称「E電」も。国鉄分割民営化に伴い公募した。もはやほとんど耳にしない

▼「実年」もそのお仲間だろう。当時の厚生省が、50、60歳代にふさわしい名称を、と公募で決めた。ちょうど35年前のきょうのことだ

▼日本人の寿命が延び、50、60歳代を高齢者扱いするのはおかしい、との声を受け新しい呼び方を考えた。「人生で最も充実する実りの時」という意味を込めたそうだが、国民に広まることはなかった

▼名称制定の翌年、まさに実年世代のハナ肇とクレージーキャッツが「実年行進曲」なる曲を発表した。中高年へのエールか、役所主導の呼び名をちゃかしたか。青島幸男さんの歌詞はなかなか強烈だ

▼<俺たちゃ実年 文句があるか/背は低いが プライド高い/機械には弱いが 女には強い><体は堅いが 頭も堅い/気が短いぶん 説教は長い><サイフは薄いが 人情は厚い/ポピュラーはダメでも 演歌は得意>

▼なーんだ、昔の実年も今の中高年と変わらないね、と安心してはなるまい。「文句があるか」と開き直れたのは昭和の話。このご時世、「文句があるぞ」と言い返され、パワハラ、セクハラに該当するなら即、アウトだ。日本の成長を支えた実年の時代も、今は昔。

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