「桜」夕食会捜査 安倍氏は説明責任果たせ

西日本新聞 オピニオン面

 疑惑を持たれた政治家は当然、国民への説明責任を果たすべきだ-。これは、不祥事が起こるたびに安倍晋三前首相が国会で繰り返した答弁である。「一般論」と断った上での決まり文句だったが、前首相は今こそ有言実行すべきではないか。

 首相主催の「桜を見る会」の夕食会を巡る問題で、東京地検特捜部が安倍氏の公設第1秘書や地元・山口の支援者らを任意で事情聴取するなど、捜査を進めていることが分かった。

 夕食会で安倍氏側が有権者に飲食代を提供したなどとして、公選法違反や政治資金規正法違反の疑いで、市民団体などが告発状を提出していた。

 特捜部は会場のホテル側が作成した領収書や安倍氏側の提出資料も分析している。関係者によれば、ホテル側への支払いが参加者の会費だけでは足りず、安倍氏側が補填(ほてん)した差額分は過去5年間で計約800万円に上る可能性があるという。

 もし、安倍氏側の差額分負担が証拠で裏付けられる事実であれば、刑事責任も問われかねない問題である。事務所や後援会の関与を一貫して全面否定してきた国会答弁が虚偽だったことにもなる。深刻な事態だ。

 この夕食会は、2013年から19年まで「桜を見る会」の前日に東京都内のホテルで開催された。主催は公設第1秘書が代表を務める「安倍晋三後援会」である。19年の場合、参加者は約800人で支援者らが1人5千円の会費で参加していた。

 「桜を見る会」は費用を税金で賄う公的行事なのに、安倍前首相時代は地元支援者らが数多く招かれ、「首相の公私混同」が厳しく批判された。

 夕食会についても「会費が安過ぎる。不足分を安倍氏側が穴埋めしていたのではないか」と国会で野党が追及していた。

 これに対し、首相当時の安倍氏は「ホテル側が設定した価格であり、事務所の収入や支出は一切ない」と補填疑惑を否定するとともに「事務所に確認したが、ホテル側から明細書の提示はなかった」と答弁していた。

 特捜部は法と証拠に基づき厳正に捜査を尽くしてほしいが、ここで問いたいのは安倍氏の政治的、道義的な責任である。

 安倍氏はきのう「事務所として(捜査に)全面的に協力している。それ以上は今の段階では答えられない」と記者団に語っている。ただ過去の国会答弁と食い違う疑義が生じたのであれば、自ら進んで国民に説明を尽くすのが筋ではないか。

 安倍路線を継承するという菅義偉首相も傍観している場合ではない。自民党総裁として安倍氏に説明を促す立場であることを改めて認識してもらいたい。

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