違いを楽しむ表現者 藤崎真二

西日本新聞 オピニオン面 藤崎 真二

 最初の出会いは12年前。「福岡市のホテルで写真展を開きます」という取材依頼だった。韓国の民族衣装や芸能、風俗や建築物などを写し取った作品展。伝統と現代の対照的な美が印象に残っている。

 小川裕司さん(66)は海運会社勤務の傍ら写真家としても活動してきた。14年間の海外駐在のうち3年間をソウルで過ごし、現地での体験を素材にフォト随筆も出した。

 出会いから4年後、宮崎総局デスクだった当時、突然連絡が来た。「日韓文化比較の研究者と美郷町南郷に行くけれど同行しませんか?」。戦乱を逃れた百済王がたどり着いた伝説が残る地を1泊2日で一緒に回った。

 小川さんは2009年、北九州市に転勤し、日韓文化の交流企画「リバーリンク・プロジェクト」を始めた。きっかけは、人と人との距離が近いソウルで感じた韓国と、日本にいてマスコミなどを通じて知る韓国とのギャップだった。それを埋めようと市民が直接触れ合える交流の場づくりを思い立った。名称の由来は北九州の紫川とソウルの清渓(チョンゲ)川(チョン)。ともに汚れていた川を両市が憩いの場に生まれ変わらせた「物語をつないだ」。

 14年から毎年、ジャズ演奏、ダンスや伝統舞踊、書などの交流会をソウルと北九州の映画館「小倉昭和館」や寺院などを会場に開いた。その心は「違いを楽しむこと」である。

 小川さんは会社勤めを昨年卒業し、今年1月「体が動くうちに地球の裏側、遠い国に行こう」とアルゼンチンを訪れ43日間滞在。ワンルームマンションを借り、コーヒー店に通い、散髪をし、多くの人と話した。人脈を生かし切るスタイルは変わらない。

 コロナ禍の中、今度はオンラインでのシンポジウムを企画した。テーマは「日韓のお茶文化」。中国から両国に伝わった後、どう普及したのか類似点と相違点を日韓の識者が語り合う。「煎茶道の祖」と呼ばれる売茶翁(ばいさおう)、中国から栽培技術を持ち帰った栄西ら佐賀県ゆかりの人物の話題も柱の一つになるという。

 小川さんの自由な表現者としての生き方に触れると、私も「旅をしたい」「何か作れないか」と豊かな気持ちになる。小川さんは創作「写真俳句」にも挑んでおり、その俳句の一つに理由を見つけた。

 <花咲けり 百の煩悩 百の夢> (論説委員)

 ◇シンポジウムは27日午後7~9時。無料で視聴できるが、事前登録が必要。QRコードで受付サイトへ。

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