台風10号の計画運休や臨時休業…「妥当だった」回答多く

西日本新聞 くらし面 長谷川 彰

台風10号 あな特通信員アンケート (下)

 今年9月に九州に接近した台風10号に関し、本紙「あなたの特命取材班」フォロワー(通信員)の協力を得て行ったアンケートでは、多くの回答者が、気象庁の厳重警戒呼び掛けや交通機関の計画運休などを「妥当だった」と振り返った。識者は、そうした受け止め方について今後の留意点もあると指摘する。

 この台風が接近する中、気象庁は9月2日から「特別警報級に発達する恐れがある」として、厳重に警戒するよう呼び掛けた。

 福岡管区気象台と国土交通省九州地方整備局も連日、合同記者会見を開き、暴風雨や土砂災害への注意を喚起。最接近の直前には、JRや西日本鉄道なども同席し、計画運休などの情報を発信した。

 こうした呼び掛けは、どう受け止められたのか。

 回答者1413人のうち「妥当だった」と答えたのは631人、「どちらかといえば妥当だった」が434人。「過剰だった」(69人)「どちらかといえば過剰だった」(209人)を上回った。

 妥当と感じた人からは「結果的に無駄でも構わない。最悪の事態を考えた警報を出してほしい。個人的には、たとえ空振りになっても生命を守るという観点で考える」(福岡市の60代男性)「これまで台風が近づいても何もしなかった父が備えに動いてくれた。呼び掛けのおかげ」(福岡県糸島市の40代女性)などの声が寄せられた。

 一方、報道を含め過剰と思った人は「事前の呼び掛け内容と起きた災害の規模に落差があると、呼び掛けを信用しなくなる人が増えるのではと心配」(同県宗像市の20代男性)「過剰な予報で責任を回避しているように感じる場合がある」(熊本県八代市の60代男性)といった意見だった。

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 交通機関の計画運休や商業施設の臨時休業に対しては、回答者1415人のうち「妥当だった」と答えたのは935人、「どちらかといえば妥当」が367人。「過剰だった」は20人、「どちらかといえば過剰」が80人だった。

 回答者には「働く人の生命には代えられない。運休や休業はもっと増やしていい」(北九州市の30代女性)「いまだに台風でも会社に行くという考え方が染み付いている。ためらいなく生命を守る行動が取れる社会になってほしい」(福岡県太宰府市の50代女性)といった声が目立った。

 こうした結果を、九州大の杉本めぐみ准教授(災害リスクマネジメント)は「警戒呼び掛けを好意的に受け止め、避難に対して非常に意欲的」とみる半面、「被害があまり大きくなかったことで、今後は警戒心が緩む恐れがある。楽観はできない」と指摘する。

 計画運休や臨時休業も「コロナ禍の中でもっと厳しい状況を経験しているため、今は好意的に受け止められやすい特別な環境と認識しておくべきだ」として、次の事態に備えて「防災・減災の知識を深め、それを受け入れる力を成熟させる教育の取り組みが必要」と警鐘を鳴らす。

 また、11日付のアンケート結果報告記事(上)の関連で掲載した「九州7県の避難状況」を調査した関西大の元吉忠寛教授(災害心理学)は、避難行動に関し「私たちは、空振りになるような行動を受け入れて慣れることは難しい。避難先には、親類宅やホテルなど結果的に空振りと感じない場所を事前に考えておくことも含め、いわば『計画避難』という考え方が大切だと思う」と話している。

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 今回のアンケートでは700人以上から、体験談や意見、新たに始めた備えなどのコメントが寄せられた。主な内容を後日、本紙ウェブサイトで紹介する。「西日本新聞 台風10号アンケート」で検索を。 (特別編集委員・長谷川彰)

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