【動画あり】「なごり雪」「夏休み」名曲流れる駅どこに? 九州探訪

西日本新聞 もっと九州面 中原 岳

 「まもなく列車が入ります」。案内放送が流れ、列車がホームに入ってくる。客の乗り降りが終わると、慌ただしくベルが鳴り、列車がゆっくり動きだす-。かつての駅は、こんな風景が当たり前だったが、今では音楽を鳴らして利用客に注意や乗車を促すことが増えた。中には、各地域にゆかりが深いメロディーを流す所もある。今回は九州を反時計回りに一周しながら、駅や電停で聴ける名曲を訪ねた。

 JR九州の新幹線や特急が土日祝日の2日間、乗り放題になる「みんなの九州きっぷ」(全九州版、1万円)を使った。博多駅から九州新幹線「さくら」に乗って約40分。熊本駅で降りて、熊本市電で洗馬橋電停へ向かった。

 熊本城に近い電停のそばには、タヌキの親子が仲良く手をつないだ像があった。写真を撮っていると、スピーカーから「あんたがたどこさ」で始まる「肥後てまり唄」の牧歌的なメロディーが流れ、1分ほどして電車が到着した。

「肥後てまり唄」が流れる熊本市電洗馬橋電停

 電停の名前は「洗馬橋」だが、近くの町名や橋の名前は「船場」と書く。「船場山には狸が居ってさ」の歌詞の通り、電停周辺が歌の舞台とされる。道を挟んだ向かいにある熊本中央郵便局のポストの上や、商店の出入り口にもタヌキの像があった。

 熊本市交通局によると、健軍町方面のホームのみ、始発から終電まで放送しているという。健軍町方面の電車は前の電停との間にカーブがあるため、接近に気付きにくい。もともと別の音を鳴らして利用客に接近を伝えていたが、1992年2月にタヌキの像が設置されたのに合わせて「肥後てまり唄」のメロディーを導入したという。

 ただ、舞台となった場所には異説もある。88年に発行された太田信一郎著「童歌を訪ねて」によると、戊辰戦争で、旧江戸幕府勢を討つために出兵した熊本人が、現在の埼玉県川越市のせん山で駐屯した際、現地の子どもたちと会話した内容が由来という。

洗馬橋電停のそばにあるタヌキの親子像

 確かに、肥後の住民同士が歌詞のような問答をしていたとすると「あなたたちはどこから来たのか」と問われ、「肥後からです」と答えるのは不自然だ。最初から、もっと狭い範囲の地名を話すはずだ。川越市には徳川家康を祭る仙波東照宮があるから、「たぬきおやじ」と呼ばれた家康をやゆする意味もあったのかもしれない。

 川越説に従うとする。「熊本の船場から来た」という答えに、子どもたちが「川越にも(同じ読みの)仙波山があって、タヌキがいて、それを猟師が鉄砲で撃って…」と返したとするならば、理屈が成り立つ。

 さらにタヌキではなく、エビが歌われている「肥後てまり唄」もある。1953年に熊本政治新聞社が発行した「肥後民謡」という本では「せんば川には えびさが居ってさ それを漁師が網さでとってさ」という歌詞が紹介され、注釈では「せんば山には狸が居ってさという文句もあるがそれはとらない」と、わざわざ書かれている。

洗馬橋電停の近くにある船場橋を渡る路面電車

 とはいえ、川越説だろうと、エビが歌われていようと、熊本の船場周辺にいた人が歌詞に登場することには違いない。

 熊本駅に戻り、鹿児島中央行きの九州新幹線「さくら」を待った。「さくら」の発車前には熊本民謡「おてもやん」を編曲したメロディーが流れた。鹿児島中央駅の新幹線ホームでも、鹿児島民謡「おはら節」をアレンジしたメロディーが使われている。いずれもフュージョンバンド「カシオペア」のむかい実さんが手掛けたという。

 

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