「歌わんとやっとられん」 26歳が聴いた仕事唄(2)

西日本新聞 筑豊版

 炭層に火薬を詰めて爆破し、崩すことで採炭する「発破採炭」で、火薬を詰める穴をタガネで掘る時に歌われた「石刀(せっとう)唄」という歌がある。気持ちがいいくらいストレートな感情が表れたこの一曲が特に好きだ。

 ♪唄でやらかせこのくらいの仕事 仕事苦にしてネエチャン泣こよりも ヒチャカラドンドン

 ある友人は、私の車に乗った瞬間に流れたこの歌を聞いて言った。「このおじいちゃん、一生懸命歌ってるね。何があったの」

 冒頭から、天まで突き抜けそうなやけくそな絶唱。私も最初は「一体どうしたんだ」と思った。火薬を扱う危険な作業のため、より責任を重く感じて半ば自暴自棄になっているようだ。

 今のように仕事にやりがいなどを求めている暇はない。とにかく働くしかない。本当は「このくらいの仕事」と言ってのけるほど楽ではなく、歌できつさをごまかしているのだろう。

 「石刀唄」は炭層にタガネを打ち付ける「カンッカンッ」という音に合わせて歌われる。地道な作業がはかどりそうな、ゆったりとしたテンポだ。

 歌にピタッとはまるのが気持ちよく、口ずさみたくなる「ネエチャン」。意味はよく分からない。調子を取るためだけのはやし言葉だろうか。「ヒチャカラドンドン」は「ヒチャカラドンドンっと」とわざとおちゃらけて歌っているように聞こえる。まるで「なんともないよ~このくらい」と自分に言い聞かせるように。

 私の場合は仕事で切羽詰まっている時、車を運転しながらよく一人で叫ぶ。

 「もうやだーーー!」

 こんな感じで、気づいたら気が狂ったように口から出ている。叫んだところで仕事がうまくいくわけではないが、どうしても口をつくように感情が湧き出てしまうのだ。この歌も「歌わんとやっとられん」と衝動的に歌われたのだろう。やり場のない感情を吐き出せば、ほんの少し気持ちが落ち着くものだ。

 現代は職場で突然歌ったり叫んだりする人はいないと思う。黙々とパソコンに向かうことが多い職場で突然大声を出すと「ついに頭がおかしくなったか」と奇異の目で見られたり、注意を受けたりするだろう。

 ちなみに私は職場にいるとき、きつくて叫びたい衝動を、大きなため息でごまかす。本当は私も仕事を歌でやらかしたい。それが受け入れてもらえるのなら。

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