GoTo見直し 政府対応は遅く無責任だ

西日本新聞 オピニオン面

 新型コロナウイルスの急速な感染拡大を前に、政府の対応はあまりに鈍く、後手に回ってはいないか。疑念を禁じ得ない。

 政府がようやく観光支援事業「Go To トラベル」の一部制限に乗り出した。ただし、その見直しは小幅にとどまる。

 事業の対象から一時除外となるのは感染者が増加している札幌、大阪両市を目的地とした旅行だけだ。期間は3週間で、予約済み分は12月1日出発分まで割引対象となる。

 感染拡大地の医療負荷を増大させないための措置といい、両市を出発地とする旅行は除外されない。全国知事会が「他の地域に感染を拡大させてしまう」と懸念を示したのは当然だ。

 予約した人は解約料を支払う必要はなく、旅行会社や宿泊施設の損害は国が補償する。政府は事業を始める際、どんな感染状況になったら一時停止するのかといった基準を示していなかった。停止に伴う影響の緩和策も慌てて決めた。泥縄の対応と批判されても仕方あるまい。

 そもそも各種の「Go To」事業は感染収束後に実施するはずだった。政府は「第2波」と呼ばれる感染拡大が始まった7月にトラベル事業を前倒しで始め、その後も経済回復のアクセルを踏み続けた。一方で、感染拡大を防ぐブレーキへの配慮が希薄だった結果、現状があると言わざるを得ない。

 11月に入ると「第3波」の様相を呈し始め、1日の新規感染者数が2千人を上回るようになった。日本医師会がトラベル事業に危機感を示しても、政府は事業継続の姿勢を貫いた。

 政府のコロナ対策分科会の提言を受け、菅義偉首相が事業の一時停止を表明したのは3連休初日の21日、具体策が示されたのは連休明けだ。連休の人の移動は感染拡大を招きかねない。遅きに失した判断である。

 そのうえ政府は、事業継続の判断を自治体に委ねる姿勢も変えていない。札幌、大阪両市の一時停止はあくまで地元要請に基づくもので、他の感染拡大地域では事業が継続される。農林水産省は「Go To イート」事業の制限を始めたが、都道府県にプレミアム付き食事券の新規発行の一時停止検討などを求める内容にとどまっている。

 感染状況は地域で異なり、地方の意向を尊重することは大切だが、政府が制度設計した事業の停止判断を自治体に丸投げするのはあまりに無責任だ。

 経済のブレーキをためらうのは地方自治体も同様だ。政府は自治体との丁寧な対話で感染防止と経済のバランスを見極め、国全体で目指す大方針を示した上で、各地の実情に応じた対応も促し、容認すべきである。

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