あの知事が豹変、その訳は

西日本新聞 オピニオン面

 古代中国の書物「易経」にいわく「君子は豹変(ひょうへん)す」。君子は立派な人物。豹変は、季節に応じ毛並みの柄が変わるヒョウのように言動ががらりと変わる例えだ

▼立派なことを言っている人も都合が悪くなれば態度を一変させる、という悪い意味で使われがちだが、格言には続きがある。「小人(しょうじん)は面を革(あらた)む」。通して読めば、君子は過ちに気付けばきっぱりと態度を変えるけれど、度量や品性に欠ける人は表面を改めるだけ-。それが本来の趣旨である

▼熊本県の蒲島郁夫知事が言動をがらりと変えた。「ダムによらない治水」を転じ、川辺川ダム建設を容認した。7月の豪雨で球磨川流域が大きな被害を受けたことを踏まえた政策転換だ

▼知事は12年前にダム建設にストップをかけた。だが、その後、国も地元も、ダムに代わる効果的かつ現実的な治水策を示すことができなかった。一方、九州では台風や梅雨の大雨による災害が相次いでいる

▼温暖化など気象環境の変化により、災害の頻度は増し、その牙も以前より荒々しくなったように思える。恵みの雨が時に「豹変」するのであれば、対策も手をこまぬいてはいられない。知事の判断には、そうした背景もあろう

▼通常は川の水を流し、大雨の際は貯留して洪水を防ぐ「流水型ダム」の建設を目指すという。環境への影響も比較的小さい方式とされる。命と清流、どちらも守るための君子豹変を期待したい。

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