不当な扱いも…警察官へ「特性知ってほしい」 知的障害者の家族切実

西日本新聞 くらし面 中島 邦之

 「知的障害者への理解を深め、捜査などで適切な配慮をしてほしい」。障害者の社会参加が進む中、事件対応などで関わりが増えているとされる警察官向けの啓発活動に、知的障害者の家族会が取り組んでいる。コロナ禍の今年も、警察側の協力を得て福岡などで研修会を開いた。背景には、相手の主張に同調しやすかったり、不審者に間違われやすかったりする特性を伝え、「理解不足から、知的障害者が不当な扱いを受けることを避けたい」との切実な思いがある。

 9月1、3の両日、福岡市の福岡県警察学校。知的障害者と家族でつくる「福岡市手をつなぐ育成会保護者会」(約400世帯)の啓発活動グループが、新人警察官計約140人を相手に研修会を開いた。

 まず「知的障害者が感じている世界」を知ってもらうため、疑似体験を実施。軍手をはめて紙の枚数を数えたり、騒音の中で目当ての相手の話を聞き分ける難しさに挑んだりした。

 次に「警察の方に伝えたいこと」として、下山いわこ子会長が「知的障害者は興味や関心が一般の人と違うので、不審者に間違われやすい。例えば、キラキラ光る女性のネックレスに手を伸ばし、痴漢と間違われることがある」と説明。さらに「話を理解できないと相手の言葉をおうむ返しに答えたり、場違いな笑顔で誤解を受けたりすることもあります」と伝えた。

 下山さんには重度の知的障害がある息子(26)がいる。以前、近所の植木を引き抜いて110番され、警察署の取調室で事情を聴かれたことがあるという。

 「息子は話の誘導にとても弱い」と下山さん。「温かいお茶が飲みたいの?」と聞くと「はい」。「冷たい水が飲みたいの?」と聞いても「はい」。同様に「おまえがやったのか?」に「はい」、「やってないのか?」にも「はい」。「何にでも『はい』と同調してしまうんです」

 後日、新人警察官たちから感想文が届いた。「初めて聞く話ばかりで参考になった」「驚かせないように話すとか、教わったことを現場で生かしていきたい」などとあったという。

 下山さんは「日常生活の中で知的障害者と接する機会は少なく、それは警察官も同じ。80分の研修だけでは全てを理解してもらえないが、まずは障害者の存在を知ってもらう契機になれば」と話した。

 兵庫県の尼崎南警察署でも10月5日、「尼崎市手をつなぐ育成会」が研修会を開催。若手警察官ら50人が障害者特性を学んだ。 同署の藤井義典警務課長は「警察官が知的障害者と接する機会が増えている。困っていることや本当の気持ちを聞き出せるよう、ゆっくりと分かりやすく話すなど、研修で学んだことを日頃から心掛けるよう指導したい」と話した。 (編集委員・中島邦之)

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