福岡舞台にハラハラドキドキします 映画「記憶の技法」 監督 池田千尋さん 主演 石井杏奈さん

西日本新聞 根井 輝雄

 幼い頃の失われた記憶を求めて、女子高校生が東京から福岡、韓国・釜山を巡る映画「記憶の技法」が、27日から全国公開されました。原作は吉野朔実さんの漫画で、池田千尋監督が実写化。サスペンスタッチで、記憶をたどる謎解きが満載です。主人公の華蓮(かれん)を石井杏奈さんが演じています。福岡でのロケは2018年。舞台あいさつで再び福岡を訪れた池田監督と石井さんに話を聞きました。

 -原作は2002年の作品です。映画化のきっかけは。

 ★池田 十数年前、ちょうどオリジナル作品を作っていた頃に原作を読みました。これを映画化して生まれ変わらせたいな、と企画をずっと温め続けていたのが、ようやく実現しました。

 -主人公の華蓮は、戸籍謄本で自分が特別養子縁組だと知り、育ての親に内緒で、ルーツを求めて福岡に来ます。

 ★池田 少し前の漫画なので、設定を少し変えています。漫画の中で印象的な、戸籍謄本の様式も、今は変わりました。それを時代に合わせてどう展開するかを考えましたね。

 -主人公がかつて暮らした住宅地として、西戸崎(福岡市)でロケをしています。西戸崎を選んだ理由は?

 ★池田 福岡県内をずっと調べて、いちばん不思議な町だったんです。海が近く、さびれた感じもあれば別荘地でもある。いろんな顔を持った面白い町。かつて近くに米軍基地が存在し、文化が混在した過去があったからですかね。この町を見つけたことで、映画の中で過去に大きな事件があって、住民が口を閉ざしたり、家を取り壊したり、何もないように装っているけれど、確実に何かが残っている雰囲気が出ました。

 -福岡での撮影は2年半前だったんですね。

 ★石井 当時19歳で、10代最後の映画でした。終わった今は楽しかったと言えるんですが、当時は抱えるものが多くて、暗くなっていました。なのに福岡の街は明るくて。でも、今はちょっと違っていて、当時に比べると他のことを考える余裕ができました。

 ★池田 当時の杏奈ちゃんしか出せない空気感を、確実に映画の中に封じ込めることができました。物語では主人公が成長するんですが、この年齢の人が持つ葛藤をこの人も抱えていて、お芝居で作り込むというより、杏奈ちゃんが主人公と同じように変化していくのが分かりました。久しぶりに杏奈ちゃんに会って、大人になったんだな、と感じました。

 -ロケ中の福岡はどうでしたか。

 ★石井 自然が多いのが良かったです。吸い込まれそうで、ずっと散歩していました。

 ★池田 食事は何でもおいしかった。カウンター越しに揚げたてを出す天ぷら、もつ鍋、水炊き…。

 ★石井 私はゴマサバ。もう1個ください、って言ったらちょうどなくて…。

 ★池田 それと、出会う福岡の人は皆、福岡が好きなんですよ。住んでいる人たちが「ここはいい」と胸を張って言える街だなって思いますね。

 ★石井 自信を持って勧めてくれて、もっと行きたくなります。

 -改めて映画の見どころは。

 ★池田 記憶って何だろう、って皆それぞれ体験があるはずですが、それが主人公を通して見えてくる。若い時は自分が何者か分からず、悩むときが結構ありますが、この映画も基本的には同じです。

 ★石井 華蓮が進んだ道を追って、華蓮目線でハラハラドキドキしていただければ、と思います。私は海辺のシーンが好きですね。

 -今後の活動については。

 ★池田 来年の連続ドラマの企画とかはあるんですが、毎年「今年は勝負だな」と思っています。40歳になり、まだまだ上がらなきゃいけない階段があるので、来年は“十段飛び”でいきたいです。

 ★石井 今回の映画で、お芝居にすごく貪欲になりました。映画の素晴らしさを感じることができ、私も十段飛びで(笑)、ますます頑張りたいです。

 (文・根井輝雄、写真・佐藤雄太朗)

 ▼いけだ・ちひろ 1980年北海道生まれ、静岡県出身。高校在学中から自主映画を制作。早稲田大第一文学部卒業。「人コロシの穴」(2002年)がカンヌ国際映画祭・シネフォンダシオン部門に出品。助監督として現場を経た後、東京芸術大大学院修了。主な映画作品に「東南角部屋二階の女」(08年)「先輩と彼女」(15年)「東京の日」(15年)「スタートアップ・ガールズ」(19年)など。テレビドラマも多数演出。

 ▼いしい・あんな 1998年7月11日生まれ、東京都出身。ダンス&ボーカルグループ「E-girls」のパフォーマーで、女優としても幅広く活躍。2015年の映画「ガールズ・ステップ」などでブルーリボン賞新人賞を受賞。テレビドラマ「仰げば尊し」(16年)、映画「四月は君の嘘」(16年)「心が叫びたがってるんだ。」(17年)などに出演。

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