基地準備着々 馬毛島「異例ずくめ」の買収1年 住民賛否割れたまま

西日本新聞 総合面 湯之前 八州

 米軍艦載機による陸上空母離着陸訓練(FCLP)の移転を目指し、政府が鹿児島県西之表市の無人島・馬毛島の買収を地権者と合意して29日で1年。政府は地元説明会を連日のように開催。海上ボーリング調査のための県の許可も27日に出され、基地の建設準備を急ピッチで進める。地元には、自衛隊の新基地受け入れが地域振興につながるとの期待がある一方、環境や騒音への懸念から反対も根強い。来年1月には市長選がある。住民の中には「反対しても国策は止められない」と諦めの声も漏れる。

 「馬毛島の買収手法は『異例ずくめ』だった」。政府関係者はこの1年の買収劇を振り返った。

 島の大部分を所有していた東京の開発会社との交渉は難航したが、当時官房長官だった菅義偉首相の意向もあり、土地の買収額は単純な資産価値として評価した45億円から160億円に積み増し、合意にこぎつけた。国は既に島全体の88%を取得した。

 政府は買収資金を国会審議が必要ない「流用」という方法で捻出。積算根拠についても「相手との関係がある」として、説明を拒んでいる。

 防衛省は8月、滑走路などの具体的な配置案を公表。10月下旬からは住民説明会も開催。近く海上ボーリング調査を始めるほか、環境影響評価(アセスメント)の準備も進める。

 政府が急ぐ背景には、米国への配慮がある。米側は長年、FCLPの安定的な訓練地確保を要求してきた。現在、2021年度以降の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)に関する日米交渉が進行中だが、与党幹部は「政権移行期の米国がどう出るか読めない。馬毛島基地の早期建設をカードに交渉を有利にしたい」と政府の狙いを解説する。

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 「馬毛島の基地工事に参加しないか」。今夏、種子島や県内の複数の建設業者に電話が相次いだ。建設利権が目当てのブローカーとみられる。「馬毛島が利権争いの舞台になっている」。住民の女性(64)は顔をしかめた。

 西之表市内には「自衛隊歓迎」「FCLP反対」と書かれた看板が目立つ。

 市長選は来年1月。基地反対を掲げる現職と、賛成や容認を唱える新人2人が立候補を表明している。

 住民の賛否は割れている。賛成派住民団体の杉為昭さん(54)は畜産を営み、騒音の牛への影響は気になるが「(米軍再編に協力する自治体に配布される)交付金などの交渉を政府と進めるのが現実的」と言う。

 一方、反対派は16日、全国から集めた30万人分の署名を防衛省に提出した。島では「反対派の店には行かない」といった住民同士のしこりが生まれている。反対派団体の山内光典さん(69)は「市民が分断されるのが許せない」と嘆いた。 (湯之前八州)

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【ワードBOX】自衛隊馬毛島基地

 馬毛島は鹿児島県・種子島から西に12キロ離れた平らな島。面積は約8平方キロ。馬毛島への移転検討は2011年6月、日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同文書に明記された。防衛省は島全体を自衛隊馬毛島基地として整備し、FCLPを受け入れるとともに、対中国を念頭に南西諸島海域の新たな拠点とする狙いもある。22年度にも基地本体を着工、25~26年ごろの供用開始を目指す。

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