五輪まで8ヵ月 観客ありの前提は疑問だ

西日本新聞 オピニオン面

 来夏の東京五輪・パラリンピックまで8カ月を切ったが、新型コロナウイルスパンデミック(世界的大流行)は依然、収束の兆しも見えない。

 どうすれば五輪の価値を損なわない形で開催できるのか。国際オリンピック委員会(IOC)と日本政府など関係者は難しいかじ取りを迫られている。

 IOCのバッハ会長が先日、大会が1年延期されて初めて来日した。菅義偉首相との会談や国立競技場視察のほかスポンサー回りも精力的にこなした。

 国内の研究機関が10月に発表した調査で「来年の開催も難しいと思う」との回答が8割を超えた。新型コロナへの不安が要因なのは言うまでもない。

 バッハ会長は「東京大会をトンネルの先にある光にしたい」と語った。開催へ強い決意をアピールする狙いがあったとみられる。ただ国内の感染者が急増したタイミングと重なり、空振りに終わった印象も否めない。

 確実な治療薬やワクチンが普及しない限り、東京大会はウィズコロナでの開催を模索するしかない。ワクチンについてバッハ会長は「用意できる状況になればIOCが費用負担する」と踏み込んだ。有望な発表が相次いでいるためだろうが、ワクチンの見通しはまだ不透明だ。

 東京大会は1万人超の選手に加え、多くの観客の来日が想定される。まず求められるのは選手の安全だ。会場に観客を入れた開催の安全も、完全に裏付けられたわけではない。

 バッハ会長は菅首相との会談後「観客を入れることへ確信を持てた」と述べた。政府も訪日客の入国後14日間の待機を条件付きで免除し、公共交通機関の利用も認める案を検討中だ。

 確かに国内でも体操の国際大会やプロ野球を通じて、人の流れと感染の関係を分析する試みは進んだ。ただ五輪・パラの会場、選手の数は桁違いの規模であり、安全確保にはさらに知見を積み重ねる必要がある。

 水際対策も極めて重要で、海外の感染状況を見極め、慎重な対応と検証が不可欠になる。

 「観客入場ありき」の姿勢の背景には、スポンサー企業との契約や入場料収入を失いたくない事情もあろう。可能なら従来型の「完全」な五輪を開催したいという気持ちは多くの国民が共有するところだ。

 しかし、安全をないがしろにはできない。無観客を想定した準備も加速するべきだ。例えばオンラインコンサートのような有料中継や寄付を募るクラウドファンディングといった方法もあるのではないか。

 IOCや大会関係者は前のめりの姿勢を改め、柔軟な発想で開催を目指してほしい。

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