藤井二冠の「モンスター級」自作PC、何がどれだけすごいのか

西日本新聞 オピニオン面 塩田 芳久

 最年少でタイトルを獲得した将棋界の「怪物」藤井聡太二冠(18)は、使っているパソコンもモンスター級という。本紙などのインタビューに、「自作した最新のものはCPU(中央演算処理装置)にAMDの『Ryzen Threadripper(ライゼン・スレッドリッパー)3990X(以下3990X)』を使っています」と語ったのだ。このパーツはパソコンの性能を左右するもので、データの処理スピードは現状で世界トップクラス。とはいえ、何がどれだけすごいのか。専門学校コンピュータ教育学院(福岡市)の伴昭彦さんに教えてもらった。

 -CPUは、どんな役割を担っているのか。

 「パソコンの『考えている部分』で、人間でいえば頭脳に当たります。演算(計算)や周辺機器の制御を行っており、性能で情報処理のスピードが左右されます」

 -情報処理スピードを決めるものは何なのか。

 「一つがCPUのコア数です。コアとはCPUで実際に処理を担っている部分です。コア数が多いほどパソコンが一度に処理できる作業の数が増えます。もう一つがスレッド数。スレッド数は、OS(☆1)上で認識される理論的なコア数を表しています」

 -もう少し詳しく説明すると。

 「スレッドとはコアが行う処理の単位です。一つのコアが一つの処理を行えばスレッド数は1ですが、実際は一つのコアが同時に複数の処理を行うことがあります。なのでスレッド数はOSが認識する(見掛け上の)コア数を指します。スレッド数が多いパソコンは性能が高いといえます」

 -CPUとは人(コア)が電卓で計算(スレッド)しているイメージでいいのか。両手に電卓を持った人がたくさん集まって、同時に二つの電卓を操作すれば大量かつスピーディーに計算できる理屈だ。

 「そう考えていいでしょう」

 -3990Xのコア数は64、スレッド数は128。一般的なCPUとの比較では?

 「家庭用のノートパソコンに搭載され、高性能とされるインテル社のCore i7(第9世代)は6コア、12スレッド、または8コア8スレッドとなっています。とはいえi7は画像や映像の編集、3Dのゲームなど負荷がかかる作業もストレスなくできます。3990Xはコア・スレッド数ともi7の10倍程度あるので、よりサクサク作業がはかどるでしょう」

 -コア・スレッド数が10倍になれば処理速度が10倍になるのか。

 「パソコンの処理速度はCPUだけで決まらないので単純に10倍とはなりません。藤井二冠は将棋ソフトに使われているようですが、家庭用パソコンで1秒間に仮に1万手先まで予測できると想定したら、藤井さんのパソコンでは同じ時間でものすごく先の手まで予測でき、より多くの局面の検討が可能になります」

 -パソコンの処理速度を決めるCPU以外の要素は。

 「一つがメモリー(☆2)の容量です。メモリーとはデータやプログラムを一時的に記憶するパーツです。CPUは常時メモリーにアクセスしてデータなどの読み書きをしています。容量が多ければたくさんのデータやプログラムを一度に処理することができます」

 -藤井二冠のパソコンのメインメモリーは256ギガという。必要十分な容量か。

 「一般的なノートパソコンに搭載されているメモリーは8~16ギガなので、いかに大容量かが分かります」

 「GPUも処理速度に関わるパーツです。CPUと同様に演算処理を行いますが、こちらは主に画像処理を担当しています。例えば3Dゲームで解像度の高い映像が滑らかに見られるのは、GPUが大量の演算処理を行っているからです」

 -藤井二冠は「将棋ソフトを動かすだけなので、(GPUを組み込んだ)ビデオカードは映ればいいという感じ」と語り、あまり重要視していないようだが。

 「確かに処理能力が要求されるゲームや映像編集などをしない限り、こだわるパーツではないでしょう。しかしGPUはゲーム以外でも注目されています。人工知能(AI)の開発などにも使われているのです。画像処理に使う高速かつ大量の演算処理能力が、AIの基本となる機械学習に向いているのです」

 -藤井二冠のパソコンをまとめると。

 「ものすごい性能だといえます。3990Xを搭載したパソコンはAI研究を行ったり高度の映像処理技術が求められたりと、使う人が限られています。私の周りで使っている人を見たことがありません。だけど、ものすごいパソコンで高速かつ大量に処理したデータを自分の頭で処理して対局に生かすことができる藤井さんはもっとすごいと思います。すごいパソコンを使いこなす藤井さんの今後に、期待が膨らみます」 (塩田芳久)

【注釈】
 ☆1 コンピューターのシステム全体を管理するソフトウエア。オペレーティングシステムの略で基本ソフトとも呼ばれる。ウィンドウズなどが代表例。
 ☆2 コンピューターの記憶装置の一種。OSなどがインストールされているハードディスクやSSDなどを補助記憶装置、補助記憶装置からOSなどを読み出してCPUとやりとりする装置を主記憶装置(メインメモリー)と呼ぶ。単にメモリーと表記するのはメインメモリー。

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