バイデン外交 国際協調の先導役に戻れ

西日本新聞 オピニオン面

 米国のトランプ政権が掲げる「自国第一」の外交からの転換を鮮明にした布陣である。

 バイデン次期大統領の政権移行チームが新政権で外交・安全保障分野を担う主要高官を発表した。実務経験が豊かな女性や非白人を積極的に登用した人選が目を引く。

 国内の分断を意識した多様性重視の顔ぶれといえ、国際協調路線への回帰に向けたメッセージも読み取れる。

 外交の要である国務長官にバイデン氏側近のブリンケン元同副長官、テロ対策を所管する国土安全保障長官に初の移民となるマヨルカス元同副長官、国家情報長官には女性初のヘインズ元米中央情報局(CIA)副長官を起用する。いずれもオバマ前政権で要職を務めた人物だ。

 オバマ政権後の4年間で世界情勢は大きく変化した。トランプ氏は地球温暖化対策の「パリ協定」など多国間枠組みに背を向けて単独主義に突き進み、中国やロシアの存在感が増した結果、混迷を深めている。

 バイデン氏は国際秩序を立て直す意向だ。その象徴が国家安全保障会議(NSC)に初めて気候変動問題担当の大統領特使を置き、民主党重鎮のケリー元国務長官を充てる人事である。パリ協定締結の立役者の起用と協定への復帰を、協調路線の第一歩とする狙いだろう。

 バイデン氏はトランプ氏が離脱を通告した世界保健機関(WHO)に残留し、来年2月に期限を迎えるロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)も延長する方針だ。感染症や核軍縮など地球規模の課題では、米国が従来果たしていた多国間協調の先導役に戻ってほしい。

 その鍵は対中国となる。バイデン氏は安全保障や通商、人権問題では強硬姿勢を示しつつ、気候変動で協調を模索するといった硬軟両様の対応になりそうだ。東アジア情勢に精通するブリンケン氏は同盟国重視の考えを採り、中国には日本や欧州の同盟国と連携して国際秩序の順守を促す戦略という。

 民主主義や法の支配を脅かす中国への対応には日本も歩調を合わせる余地がある。ただ同盟国としての新たな負担を求められる可能性も排除できない。

 欧州との冷え込んだ関係は修復に向かうとみられる。一方、中東でバイデン氏はイラン核合意への復帰を目指すものの、トランプ政権が推進してきたイスラエル寄りの政策の軌道修正は当面の難題となる。

 日本にとっては北朝鮮政策も重要で、バイデン政権から韓国との関係改善を求められる局面も想定される。新政権との関係構築には「米国偏重」を抜け出し、戦略の練り直しも必要だ。

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