対中国、多国間協調を重視 バイデン政権 米国の識者、フランク・ジャヌージ氏に聞く

西日本新聞 国際面 田中 伸幸

【展望 バイデン政権】(1)

 米大統領選で勝利を確実にしたバイデン前副大統領。新政権のアジア外交の展望や、それに伴う日本への影響について日米の識者に聞いた。

 -バイデン次期米大統領はどんな政治家か。

 「上院外交委員長を務めたバイデン氏と12年間、仕事をした。同盟国や北大西洋条約機構(NATO)など国際協調を重視する。核軍縮にも詳しく、オバマ政権時のケリー国務長官の広島訪問を強く支持した」

 「意見の相違がある相手に対して耳を傾ける柔軟さがある政治家だ。同時に反論もいとわず、単刀直入な物言いをすることもある」

 -東アジアに対する外交のスタンスは。

 「上院議員時代から、特に中国の改革の行方に注意を払ってきた。貿易、安全保障、人権などの面で国際ルールに従って行動しているかを気にかけてきた」

 -トランプ大統領は中国に強硬姿勢だった。

 「トランプ政権の外交は総合的に見れば失敗だが、日米関係の強化などいくつか明るい側面はある。中国の脅威を浮き彫りにしたことも大きかった」

 「ルールに従わない中国に強硬姿勢で臨んだのは間違いではなかったが、米国単独で行動したのはまずかった。その点、バイデン氏は単独での対応より多国間協調を重視し、効果的な体制づくりを目指すだろう」

 -具体的には。

 「中国が強硬である限りバイデン氏自身の対応は過去より厳しくならざるを得ない。環太平洋連携協定(TPP)に米国が参加するよう再考を切り出したり、台湾との自由貿易協定(FTA)締結に向けて動いたりするかもしれない」

 「だからといって中国を敵視するわけではない。地球温暖化対策や北朝鮮の非核化問題では中国との協力が必要となるからだ」

 -バイデン氏はかつて、あなたを含むスタッフを訪朝させて交渉の道を探った。今後もあり得るか。

 「核問題の解決は外交しかないと考えている。だが、トランプ氏のようなトップ外交ではなく、まずは同盟国や中国などと話し合い、それから実務者協議だ。トップ会談は意味のある進展が見込める時になって、初めて現実になるだろう」

 「バイデン氏は私に、外交とは『絶対に不可能な状態』を『可能性があまりない状態』に改善するためのものだと説いたことがある。北朝鮮に変化を促すことが難しいことはバイデン氏はよく分かっていて甘い考えは抱いていないが、取り組もうとするだろう」

 -日本に対してはどのようなスタンスで臨むか。

 「日米同盟の重要性は分かっている。貿易や沖縄など常に問題は存在するが大きな懸念はない。バイデン氏は選挙前、韓国に同盟重視のメッセージを送り、日本向けにはなかったが、それは日米関係が良好な証しだ。引き続き良好な関係を保てると思う」

 -トランプ政権は海外に展開している米軍の縮小や撤退に前向きで、多くの国民が賛同している。

 「バイデン氏も米軍が『世界の警察官』であるべきとは必ずしも思わない。ただ、中国など世界に脅威が残っている中で誤ったシグナルを送るべきではないと考えているはずだ」

(聞き手はワシントン田中伸幸)

◆フランク・ジャヌージ氏 米マンスフィールド財団理事長。バイデン氏の上院議員時代、上院外交委員会の政策部長として東アジア政策を提言した。56歳。

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