九州・沖縄が軍事最前線に バイデン政権 琉球大准教授・山本章子氏に聞く

西日本新聞 国際面 高田 佳典

【展望 バイデン政権】(4)

 米大統領選で勝利を確実にしたバイデン前副大統領。新政権のアジア外交の展望や、それに伴う日本への影響について日米の識者に聞いた。

 -バイデン政権で沖縄の位置づけはどうなるのか。

 「重要性はさらに増す。ミサイル能力で優位に立っていたオバマ政権時代は、中国の攻撃が届かないグアムやハワイに在沖米軍を遠ざけた上で戦う作戦だった。中国の射程が急激に伸びた今、米国は日本や台湾など中国に近い同盟国の拠点からミサイル能力を備えた小規模部隊を島しょ部に分散展開。宇宙、サイバーも加えた総合力で対抗する戦略に変えた。国防長官候補として名前が挙がっているミシェル・フロノイ氏も同じ考え方だ」

 -沖縄の基地負担は軽減されるのか。

 「中国に近いからこそ重要だという考え方の下、基地は確保しつつ訓練を分散させる方針を取っているため基地を減らすという発想にならない。沖縄の立場は一層厳しいといえる」

 -米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設はどうなるのか。

 「辺野古の代替施設に求められる能力が変化している。島しょ部に小規模部隊を展開する作戦では輸送能力が重要になる。現行計画では、辺野古の滑走路は短すぎて大型輸送機が離着陸できない。辺野古は工事が可能な部分だけを埋め立て、輸送機オスプレイやF35B戦闘機といった垂直離着陸が可能な機体を使用した上、さらに普天間の継続使用まで求めてくる恐れがある」

 -九州への影響は。

 「国際協調を求めるバイデン氏は自衛隊の役割増を求めてくる可能性が高い。空や海の防衛、哨戒活動を強化するため航空自衛隊築城基地(福岡県)や新田原(にゅうたばる)基地(宮崎県)、海上自衛隊佐世保基地(長崎県)の重要性は増すだろう」

 「米軍の訓練分散という観点からいえば、陸上空母離着陸訓練(FCLP)が予定される馬毛島(鹿児島県)も含め、九州各地の自衛隊基地を拠点とした米軍の訓練も増えていくことが考えられる」

 -九州で訓練を受け入れることが沖縄の負担軽減になっているのか。

 「なっていない。米軍岩国基地(山口県)に移転したKC130空中給油機は沖縄に飛んできて訓練している。沖縄県道104号線越えの実弾砲撃訓練も日出生台演習場(大分県)などに移ったが、沖縄では新たな訓練が始まっている」

 「米軍に国内法が適用されず、訓練を制限することもできない日米地位協定がある限り、受け入れ先の市民の不安は拭えない。抵抗感は増すばかりだ。基地負担軽減、訓練の分散、地位協定の見直しはセットで行うべきだ。ただ、米国側は既得権を手放そうとしない。『労多くして功少なし』という過去の経験から日本側も交渉を嫌がっているのが実情だ」

 -九州・沖縄の状況はますます厳しくなる。

 「日本は南西諸島の防衛強化のために九州・沖縄の自衛隊基地を拡充している。米国にとっても中国に近くて自由に使える自衛隊基地が増えることは歓迎すべきこと。米中対立が激化する中、九州・沖縄は軍事的最前線になっている」

(聞き手は那覇駐在・高田佳典)

◆山本章子氏(やまもと・あきこ) 琉球大准教授。専門は日米関係史や安全保障論。著書「日米地位協定」(中公新書)で、20年度の石橋湛山賞を受賞した。41歳。

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