グローバル化の制御必要だ バイデン政権 九州大大学院教授・施光恒氏に聞く

西日本新聞 国際面 金子 渡

【展望 バイデン政権】(5)

 米大統領選で勝利を確実にしたバイデン前副大統領。新政権のアジア外交の展望や、それに伴う日本への影響について日米の識者に聞いた。

 -米大統領選でトランプ大統領が敗北を認めない異例の展開となっている。

 「民主主義の根幹である選挙を現職大統領が否定する現状は大問題だ。民主主義は妥協の政治。成り立たせるには国民間に一定の仲間意識が必要となるが、今の米国はその前提が壊れてしまっている。本来ならば選挙が終わってノーサイドにならなくてはいけないのに互いの支持者がののしり合っている」

 「ただ、選挙に不正があったとするトランプ氏の主張を頭から否定してはいけない。選挙結果は真っ二つに割れており、一部報道によると、共和党支持者の半数が正当な勝利者はトランプ氏と回答している。融和を図るためにも、バイデン氏はトランプ氏側が求める調査に協力すべきだ。問題が長引けば、中国を利するだけ。『やはり民主主義は駄目だ』と宣伝され、米国の国際的な影響力低下につながりかねない」

 -分断の原因は?

 「最大の原因は行き過ぎたグローバル化だ。ヒト、モノ、カネが自由に国家間を移動できるようになり、所得格差が深刻になっている。資本の国外流出を恐れる政府は企業や投資家の声ばかりに耳を傾け、経済政策が非常に不公平なものになった。またエリート層は自分が偉くなったのは国や地域が支えてくれたおかげという感覚を持たなくなり、社会や一般庶民のことを全く考えなくなった。多くの人はトランプ氏が分断をつくり出したと主張するが、違う。分断があったからトランプ氏のような人物が大統領に選ばれた」

 「似たような状況は欧州にも広がっている。英国のジャーナリスト、デイビッド・グッドハートは自身の著書で英国は現在、都会に住む高学歴、高収入で自分はどこででも稼げると考えるエリート層『エニウェア族』と、特定の地域に根ざして暮らす庶民層『サムウェア族』に分かれていると説明。ブレグジット(英国の欧州連合離脱)の背景には、こういった国民間の分断があったと指摘している」

 -日本も同じような状況になる恐れはあるか。

 「日本は少し事情が違う。格差が拡大したというより、中産階級がおしなべて没落した。IT長者のような人も出てきているが、みんなそろって貧しくなった。ただ安倍晋三政権の7年8カ月で消費税が5%増えたのに対し、法人税は7%も下がった。非正規雇用も増え、外国人労働者も増えている。今後、グローバル化が一層進み、格差が欧米並みに広がれば、日本版トランプが登場してもおかしくない」

 -新政権に望むことは。

 「グローバル化と民主主義は相性が悪い。両立させるには、一定の歯止めが必要だ。各国の指導者が話し合って資本の国際的な移動をある程度制限し、国民目線に沿った経済政策を実施すべきだ。今、世界は新型コロナウイルス禍で危機に直面している。これを機に庶民第一主義による国際協調路線に転換するのが望ましい」

(聞き手は金子渡)

◆施光恒氏(せ・てるひさ) 九州大大学院比較社会文化研究院教授。専門は政治理論、政治哲学。著書に「英語化は愚民化」などがある。福岡市出身。49歳。

=おわり

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