夫婦で移住3年、恵みに感謝の日々【日田めいじん100選】

西日本新聞 大分・日田玖珠版 中山 雄介

 夫婦で自然の恵みに感謝しながら生きる日々だ。大分県日田市大山町の草野貴弘さん(39)は、猟師として近くの山に入り、シカやイノシシをわなで捕る。妻亜李砂さん(31)は、その獣の骨を生かしたアクセサリーなどを制作し、販売する。「毎日がキャンプ生活のよう」。3年前に移住したばかりの若い夫婦だが、すっかり山生活の達人になった。

 2人が出会ったのは、福岡市中央区の親不孝通りにあるライブハウス。貴弘さんはラッパー、亜李砂さんは専門学校時代の友人とたまたま訪れた客だった。交際が始まったものの、雑誌社で働いていた貴弘さんと、ブライダル会社に就職した亜李砂さんの休日が重なるのは、年に数日しかなかった。

 「一緒にいる時間を長くするために環境を変えたい」。そう考えていた時、日田市の地域おこし協力隊員の募集を知り、2人で応募。2017年6月に移住するのに合わせて結婚した。

 貴弘さんは知人に誘われたのをきっかけに、隊員の仕事をしながら狩猟免許を取得。「獣の気持ちになって」通り道を予測し、20センチの輪っかのわなを仕掛ける。わなは葉っぱで隠し、そのルートに誘導するように木を植えたりもする。「体一つで山に入り、獣と真剣勝負する」。そんな猟の魅力にはまり、3年の隊員任期を終える前の今年3月下旬、肉をさばいて販売も手掛ける「奥日田獣肉店」を自宅そばに開店させた。店舗は慣れない大工仕事ながら、自分で建てた。

 亜李砂さんは、「水郷ひたキャンペーンレディ」を務めたほか、協力隊員として市のPRパンフレット編集などを担当。任期後はキッチンカー(移動販売車)「野良カフェ」を開業し、松原ダム湖(梅林湖)付近やイベント会場で自家焙煎(ばいせん)コーヒーなどの販売を始めた。貴弘さんが仕留めたシカやイノシシの骨でつくったオリジナルアクセサリーは、珍しさもあり人気だ。

 移住当初、2人は近所の人に旬の野菜をもらうと返すものがなく、申し訳ない気持ちになったという。今は「おるかい」と訪ねてくる近所の人に、新鮮なジビエをお返しする。地域に溶け込んでいる証しであり、「人の多い福岡にいる時より、人と人のつながりがある社会の中で生きている実感がある」と貴弘さん。

 家族の食卓に豚肉や牛肉が並ぶことはほぼない。「旬を過ぎたジビエをおいしく食べる方法も、今では分かってきた」。楽しみと生きるための仕事の境目が曖昧な生活。夫婦は「最高のぜいたく」と感じている。

 (中山雄介)

 メモ 奥日田獣肉店では、シカやイノシシ肉のバラ、ロース、モモなどがそろう。野良カフェでは生乳ミルクセーキ、フライドポテト、「とろトロ半熟あじ玉揚げ」などを販売。出店状況は写真投稿サイト「インスタグラム」で発信している。両店とも問い合わせは野良カフェ=0973(52)3822。

   ◇    ◇

「日田めいじん100選」 ヒタスタイルと共同企画

 西日本新聞社は日田市の無料情報誌「ヒタスタイル」と共同で「日田めいじん100選」の企画に取り組んでいます。日田に住む、もしくは働く名人や達人など、その道の極め人を大分・日田玖珠版で紹介します。記者が日頃の取材で探し出した方のほか、読者の推薦(自薦も含む)で、面白いと判断した方も紙面に登場してもらおうと考えています。情報をお寄せください。

 連絡先は日田支局=0973(23)5177▼ファクス0973(23)5178▼メール=hita@nishinippon-np.jp

大分県の天気予報

PR

大分 アクセスランキング

PR

注目のテーマ