父に包まれて過ごす冬

西日本新聞 社会面 川原 隆洋

 実家に帰ると、母が今年5月に亡くなった父の衣類を整理していた。いらないもの、思い出深くて残しておきたいものを仕分け中で、全ての上着のポケットに、ハンカチとポケットティッシュが入っていたのには、きちょうめんだった父の性格が表れているなあと、母と笑い合った。

 「これ、あなたに合うんじゃない」と渡されたコートとジャケット。少し昔のタイプだが、羽織ってみるとサイズはぴったり。鏡で確認すると思わず声が出た。「あっ、おやじだ」。そこに映っていたのは、まさに30年ほど前の50代の父だった。体つき、全体の肉の付き方、顔つき、着こなし…。不思議なもので年を取るごとに、父に似ていく気がする。鏡の中の自分に「もらうよ」と声を掛けた。

 本格的な冬の季節に入る。父のコートとジャケットで外出する日が増えるだろう。懐かしさも感じながら、父に包まれて、この冬を過ごしたいと思う。 (川原隆洋)

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